番外編『超越者はただ静かに暮らしたい』

──エピローグ:残された者たち


私の名前は、ルーザ・マーシェル。

かつて“魔導の頂”とまで称された、大魔導士だ。


そして、今では最後の《超越者》として、この時代を生きている。


……なぜ生きているのか。

それは、おそらく――ファルカのように在りたいと願ってしまったから。


彼のように戦い、彼のように超え、そして――彼のように、終わりたいと。


そんなものは、不純な動機かもしれない。

けれど、それが今の私を動かす唯一の理由だ。


**


《超越者》――

その名は、本来たった一人のためにある。

すべてを超越し、存在の限界すらも打ち破った、ある魔法使いの男。


私は……《超越者》を名乗ってはいるが、

彼を超えることはできない。

できるはずがない。


もう、彼はこの世界には存在しないのだから。


**


あの終焉の日から、数年が経った。


私は、彼の残した仲間たちと旅をしている。

あの日、彼と共に世界を救った──剣士と賢者。


オーディン・アルト。

今やSランク冒険者として、国をも動かす実力者だ。

熱血漢だった彼は、今も変わらず、前だけを見て剣を振るう。


アリス・ファーヌ。

同じくSランクの賢者で、かつてファルカと心を通わせた少女。

その眼差しは今も柔らかく、けれどどこか遠くを見つめている。


**


……なぜ、私は彼らと旅をしているのか。

理由は、もう思い出せない。


ただ、ひとつだけはっきりと言えることがある。


ファルカ。

君の仲間たちは、とても強くて、優しくて……そして、何よりも素晴らしい。


君が命を懸けて守ったものは、ちゃんと、この世界に生きているよ。


だから今は、私もそれを守る側にいる。

彼らと一緒に、旅をして、笑って、戦って――時には空を見上げながら、君のことを想っている。


**


世界はまだ、終わっていない。

君が静かに見守るこの世界で、

私たちは今日も、生きている。


それだけで、きっと、十分だ。


──ありがとう、ファルカ。

今でも、ずっと。


君は、私たちの中に生きている。


【To Be Continued】

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超越者はただ静かに暮らしたい りーく/Leak @leakton

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