激しい雷雨とともに故郷が崩れ落ちた夜、エルクはすべてを失った。
村を襲った洪水、天災のはずだったそれは、
封印を解いた弟ライナスの手によって引き起こされたものだった。
あのときの歪んだ笑みと血の記憶は、
三年経った今でも悪夢となって彼を苛む。
教会のサマナーとして旅を続けるエルクとフィールは、
静かすぎる街ラインバーグに辿り着く。
水の商都と謳われた街は、今や観光地の面影もなく、
闇に喰われるように人が消えていた。
優しげな市長、哀しげな街並み、囁かれる怪異。
だがその裏で動いていたのは、死者を蘇らせるための狂気だった。
「もし、死んだ人間を取り戻せるとしたら……君はどうする?」
答えを持てぬまま剣を振るう少年と、
神を召喚する異能を抱えた契約者。
ふたりの背を、やがて蛇のような眼が静かに追い始める。
これは、絶望から始まる、静かで熱い追跡譚。