第1章 1年生編
第10話 思ってたんと違う
《乾さくら視点》
1週間くらい一緒に過ごしていれば、新しくできた友達の性格くらいは何となく分かってくる。
少なくとも、馬が合うか合わないかくらいは確実に分かると思う。
その点、東雲怜奈は結構相性が良い方だ。
あたしは根っからのおふざけキャラだから、ちゃんとツッコミしてくれたり適当にあしらってくれたりする人と相性が良い。怜奈は上手いことやってくれるから、あたしもノリでふざけられて楽しいんだ。
怜奈を一言で表せば…いや、表せない。あの子はだいぶ独特な子だからね。
なんというか、キャラ作りが徹底されてて怜奈が纏っている空気は説明しにくい。
例えば、確実に演じてるのにそこまで違和感がなかったり、年齢の割には精神年齢が高そうだったり、圧倒的すぎる自己評価の高さだったりと色々だ。だけど、どれを取っても嫌な感じがするわけじゃないのが怜奈のスゴイ所だろう。
普通なら「あの子ちょっとアレだよね」ってなりそうなものでも、怜奈の場合はそうであるのが当たり前かのような説得力がある。
やっぱり、美人っていうステータスは全てを捩じ伏せる力があるみたいだ。
だけど、さっきのあれは少し意外だった。
あたしは隣の美香にもどう思ったか聞いてみる。
「ねえねえ、怜奈って生徒会とか入るタイプに思ってた?」
「いえ、ちょっと意外だったかもです」
「だよね!?生徒会みたいな忙しくて面倒くさそうな事とかやりたくないタイプだと思ってたけど、案外そーゆータイプでもないのかもね」
当の怜奈と凛華はちょっと前に体育館を離れて別の部活を見に行ったからこの場にはいない。体育館に残っているのはあたしと美香の2人だけだ。
だから、バレー部の活動を眺めながら心置きなく色々と話すことができる。
「そもそも怜奈ってさ、何であそこまで嫌な感じがしないの?不思議すぎない?」
「というと?」
「だってさ、『〜かしら』とか『だわ』とか言う女子なんてまったく見かけないじゃん?まあ、ごくたまに見かけたりするけどさ…。けど、今までクラスメイトの中にそんな子居なかったじゃん。普通そんな変な口調の人がいたら変な目で見たくなっちゃうと思うんだけど、怜奈の場合はなぜかそーゆー気分にならないから不思議なの。美香はどう?」
「それにはわたしも同感です。何故か自然ですよね、アレ。それを分析しろって言われたら難しいですけど……」
「分かるわぁ〜。分析むずいよねあの感じ。会えば分かるけど、会ったことのない人に説明するのはムズイ感じ」
「うーん、何と言うか、天性のモノなんじゃないですかねアレは。怜奈って『だって私可愛いから』みたいなのを素で言ってくる攻めたタイプですけど、あれも別に嫌な感じはしないじゃないですか。それってやっぱり反論を全く抱かせないレベルで怜奈が美人なのと、纏ってる空気が特別な感じがするからじゃないですかね」
「やっぱ独特の空気感あるよね!?いやぁ良かった、分かってくれるか〜!」
やっぱり美香も感じてたんだ!
怜奈が何を言ってても何をやってても「まあ怜奈だしな」って納得できてしまう不思議な感覚を!
いやはや、つくづく怜奈は不思議な人間だ。
「けどさ、やっぱり何してても嫌な感じがしないって凄いよね。絵になるというか何というか」
「分かります!この前ヘアゴムを口で咥えながら髪を結んでた時なんて、女の子同士なのにちょっと色っぽいなって思っちゃいましたもん」
「あはは、ちょっと分かるかも。『うわ、生物として勝てねぇ』って思う瞬間あるよね。ハァ、嫌になっちゃうわ」
「さくらだって十分可愛いですよ?」
「どーもどーも。けど怜奈と並んでると自信無くなっちゃうね」
「はは、それはわたしも同感です」
そうは言っても、だからといって怜奈の隣に立ちたくない訳ではない。むしろ立っていたいくらいだ。
女子校において、あーゆービジュアルつよつよ女子は権力が高い。そんな子と仲良くできてたら色々とお得だ。
それに、そもそもあたしが怜奈に初めて声をかけた時、あたしは「あの子と仲良くなりたい!」って思ったんだ。めちゃくちゃ美人なのにあんまり周りの人が話しかけに行ってなかったから、あたしが1番に友達になっちゃおって思った。
実際、その判断は間違ってなかったと思う。
怜奈はあたし達とずっと仲良くしてくれてるし、怜奈が他の人と仲良さそうに喋ってる姿はあんまり見たことがない。つまり、怜奈はあたしたちのことが好きってことだ!!
ふふ、あんな美人に好かれているっていうのは結構良い気分だ。もちろん同性愛という意味じゃないけど、自分より凄いものを沢山持った人が自分に懐いてくれているというのはちょっとした優越感を感じられてイイ。
…あれ、もしかしたらあたしってドSの素質あるのかな?
まあいいや!変なことは考えないようにしよう!
「じゃ、そろそろあたしたちも行こうか」
「ですね」
怜奈が生徒会に入るとか言い出した時はびっくりしたが、新たな一面を知ることができたってことだ。
これからももっとあの子のことを知っていきたいな。
「次どこ行く?」
「家庭科部とか少し興味あるんですけど行ってみていいですか?」
「いいよー!行こう行こう!」
そんなことを思いながら、あたしは美香と共に体育館を出た。
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