第9話 裏金の足跡、そして隠された帳簿
金賀一は、署長が関与している可能性のある「闇」の核心が、裏金にあると睨んだ。早すぎる出世、不自然な幕引きとなった事件、そして黒岩の「署長には気をつけろ」という警告。これら全てが、署長が違法な金の流れに深く関わっていることを示唆している。
「鮫島さん、署長の過去の事件資料、特に資金の流れが不透明なものを全て集めてください。署長が警察の職権を利用して、裏社会から金を受け取っていた証拠を掴みたい」
金賀一の指示に、鮫島は戸惑いを隠せない。警察官である自分が、上司である署長の不正を暴く手伝いをすることになる。しかし、黒岩の遺書と金賀一の熱意に触れ、鮫島は彼の言葉に納得せざるを得なかった。
「わかった。だが、署長の金を追うのは危険だ。特に、裏金となると…」
鮫島の懸念をよそに、金賀一の目はすでに獲物を捉えていた。金塊に隠された真実が、まさにこの「裏金」に関わる情報なのではないか。黒岩は、自身の死を偽装してまで、この情報を世に公表しようとしていたのだ。
金塊が語る「裏帳簿」の存在
金賀一は、改めて金塊を調べ始めた。黒岩が遺書に記した「金塊に隠された情報」とは、単に文書だけではない。金賀一の直感は、金塊そのものに何かが仕掛けられていると囁いていた。彼は、金塊の表面を丹念に撫で、微細な凹凸を探した。そして、ついに、金塊の底面に、巧妙に隠された小さな窪みを見つけた。
窪みには、さらに小さな金属製のカプセルが収められていた。金賀一がそれを開けると、中には、極小のマイクロSDカードと、手書きで書かれた数字の羅列が入っていた。
「これだ…!これこそが、黒岩が残した、署長が絡む裏金の裏帳簿だ!」
金賀一は、震える手でマイクロSDカードをパソコンに差し込んだ。画面に表示されたデータは、署長が関与する組織的な裏金工作の詳細な記録だった。日付、金額、そして金の出所と使途。そこには、署長が裏社会の人間と繋がっていることを示す決定的な証拠が、余すところなく記されていた。
驚くべきことに、その中には、黒岩が組織にいた頃の、彼が関わった裏金の詳細も含まれていた。黒岩は、自らが関わった不正の記録を残すことで、署長を道連れにしようとしていたのだ。遺書にあった「俺を殺したのは、組織の刺客ではない」という言葉は、署長が自身の不正が露見することを恐れ、黒岩の計画を阻止しようとしたことを示唆していた。黒岩の死は、病によるものではなく、署長によって偽装された事故か、あるいは口封じのための殺人だった可能性が高まった。
署長への反撃、そして街の未来
金賀一は、裏帳簿のデータと、黒岩の遺書、そして金塊を前に、静かに鮫島を見つめた。
「鮫島さん、この裏帳簿が、この街の闇を打ち破るための、最後の切り札です。署長の不正を公にすることで、警察組織を浄化し、黒岩が本当に望んでいた、クリーンな街を取り戻すことができる」
鮫島は、裏帳簿のデータに目を通し、表情を硬くした。署長の不正の規模は、彼が想像していたよりもはるかに大きかった。しかし、同時に、この証拠があれば、署長を追い詰めることができるという確信も得られた。
「…わかった。俺も、警察官として、この街の闇をそのままにしておくわけにはいかない」
金賀一の金への執着は、今や、この街の未来への希望へと昇華していた。彼は、黒岩の遺志を継ぎ、署長の不正を暴き、この街に真の光を灯すことを誓った。
果たして、金賀一と鮫島は、この裏帳簿を武器に、強大な署長という壁を打ち破り、この街の闇に終止符を打つことができるのだろうか?
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