第10話 ネガティブキャンペーンの嵐
裏帳簿が示す署長の不正の全貌を掴んだ金賀一は、次の手としてネガティブキャンペーンを仕掛けることを決意した。署長を直接告発する前に、まず世論を味方につけ、彼の評判を地に落とす必要があった。
「鮫島さん、この裏帳簿のデータは、一般の人には理解しにくい。もっと分かりやすく、感情に訴えかける方法で、署長の悪事を世間に広める必要があります」
金賀一は、自身のネットワークを駆使し、ゴシップ誌の記者や、裏社会に精通する情報屋と接触を図った。彼らに署長の過去の不審な行動や、裏金にまつわる噂話を匿名でリークし始めたのだ。もちろん、裏帳簿の決定的な証拠はまだ温存しておく。あくまで「噂」のレベルで、署長の悪評をじわじわと広めていくのが目的だった。
署長の焦燥と反撃
金賀一の仕掛けたネガティブキャンペーンは、予想以上の効果を発揮した。これまで盤石だった署長の評判に、徐々にヒビが入り始める。街の人々は、これまで崇拝していた署長に対する疑念を抱き始め、警察内部でも動揺が広がっていた。
署長は、自身の名誉が傷つけられていることに気づき、激しく焦燥していた。彼は、このネガティブキャンペーンの裏に、金賀一の影があることを直感した。
「金賀一…あの守銭奴め、まさかこんな手でくるとは…!」
署長は、自身の権力を使い、金賀一を「怪しい探偵」として警察にマークさせるよう指示を出した。金賀一の事務所には、不審な人物が出入りするようになり、彼の動きは常に監視されるようになった。 さらに、署長は金賀一の顧客に圧力をかけ、彼の仕事を妨害しようと試みた。金賀一の探偵としての生命線である「金」を断つことで、彼を追い詰めるつもりだったのだ。
金賀一の覚悟
しかし、金賀一は臆さなかった。むしろ、署長の焦りを感じ取り、彼の計画が順調に進んでいることを確信した。
「署長が慌てている証拠ですね。これで、本丸に攻め込む準備が整った」
金賀一は、金塊を手に取り、その冷たい感触を確かめた。この金塊は、もはや単なる財宝ではない。黒岩の遺志、そしてこの街の未来を賭けた、彼の新たな使命の象徴だった。
「署長、あんたがどれだけ汚い手を使っても、俺は止まらねぇ。この金塊と、黒岩が託した真実で、あんたの築き上げた闇を、全て暴いてやる」
金賀一の金への執着心は、今や、強固な正義感へと変貌していた。彼は、署長からのあらゆる妨害工作を乗り越え、裏帳簿の全貌を白日の下に晒すことを決意した。
果たして、金賀一は、署長の激しい反撃をかわし、このネガティブキャンペーンを成功させることができるのだろうか? そして、裏帳簿の真実を世に示し、この街の闇に終止符を打つことができるのか、彼の新たな戦いは、いよいよ佳境を迎える。
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