誕生日と誕生日
【こんにちは、タナトス】
迎えた5月21日。
朝からパーティーの準備に追われるナイト家。
ティムとディアの9歳の誕生日だ。
「おじいちゃん、ケーキ出来た?」
帰宅したディアが厨房を覗く。
「もう少しで出来ますよ。飾り付けをしたら完成です。」
「えへへ、楽しみだな~。ガルダも来てくれるかな?」
「どうでしょうね……。やはり来て欲しいですか?」
「うん!だってフィアンセだもん!」
えへへと笑うディアの頭を撫で、笑って飾り付けるマジパンを取り出した。
「あっ、ガルダだ!格好いい!」
「ディアもあるんですよ。並べて飾りますからね。」
ウエディングケーキみたいだと大喜びのディア。
どこまで本気なのかと苦笑しながら飾り付ける。
「ほんとディアちゃんはおませなんだから。半獣のガルダをお婿さんにするなんて、私の真似してるのかしら?」
「してないもん。ガルダはガネーシャ神より格好いいし~。象より鷲の方が絶対いいもん。」
「あら、象の方が可愛いでしょ?鷲って恐い顔してるじゃない。ガネーシャは子象だから可愛いわよ~?」
「ディアは鷲が好きなの!あの顔が大好きなの!猛禽類最高でしょ~?」
二人の会話にシャスタが笑う
「どちらも素敵ですよ。はい、完成しました。」
出来上がったケーキを見て大喜びする孫娘。
微笑んで見ていたシャスタだが、ナンシーに異変が現れた。
「う……いたた……」
ちょっと膨らんでいるお腹を抱えて座り込む。
「だ、大丈夫ですか?女神は流産しないはずですが……。」
「り、臨月よ、陣痛みたい、んっ、」
言われて思い出した。
女神のお腹はあまり大きくならないのだ。
とても臨月に見えない為、すっかり忘れていた。
「とりあえず移動しましょう。歩けますか?」
首を振るナンシーを横抱きに移動する。
「ディア、おばあちゃんとガネーシャを呼んで来て下さい。」
「う、うん。ナンシーお姉ちゃん、大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ。赤ちゃんが産まれるだけですから。」
「え!?産まれるの!?じゃあ誕生日一緒だね!」
嬉しそうに笑ってシルビア達を呼びに行く。
「そうか、誕生日が一緒になるんですね。そんなに嬉しいのかな、同じ誕生日は。」
くすくす笑うシャスタに、ナンシーが目で訴える。
ハッとしてナンシー達の部屋へと向かった。
駆けつけたシルビアとガネーシャが出産を手伝い、息子のタナトスが誕生する。
産声を聞いて駆け込むシヴァ夫妻とバートン夫妻。
「お父さん達、いつの間に来たの?」
両親の登場に、不思議そうな顔をするナンシー。
「シヴァ神様が迎えに来てくれたんだよ。はは、ガネーシャ神にそっくりだ。」
「うはっ、半端ねぇ!孫も可愛いじゃねぇか!」
既にメロメロ状態のシヴァを見て、みんなが笑う。
「おめでとう、ガネーシャ、ナンシー。」
創造神が降臨し、タナトスに祝福を贈った。
「じゃあ、一緒に出産パーティーもやっちゃいますか。」
賛成した神々が準備に走る。
バートン夫妻も一旦帰宅し、店を閉めてスイーツ持参で戻って来た。
そして5時。
学校の友達と親達がナイト家を訪れた。
出迎えたソフィアとマルクに案内され、双子の誕生パーティー会場へと向かう。
隣の部屋でもパーティーが開かれているらしく、騒然としていた。
「ソフィアさん、こっちは何のパーティー?」
「同居しているナンシーに子供が産まれたの。そのお祝いよ。」
「って、写真集の人達じゃないの!美男美女揃いね~……」
うっとりしている母親達に苦笑しながら、誕生パーティーを開始した。
「美味しいわね~。さすがナイト家って感じ。シェフも一流なのね~。」
並べられた料理の美味しさに大満足の親子達。
「おじいちゃんが作ったんだよ!ケーキもすごいんだから!」
おじいちゃんっ子のディアが自慢する。
「まあ、マルクさんのお父様はまだまだ現役なのね。」
「いや、俺のじゃなくてソフィアの」
「皆さん、お口に合っていますか?」
そこへシャスタが顔を出す。
初めて訪れた母親達の感想が気になっていたらしい。
写真集などで有名なシヴァ神ことシャスタ。
彼の登場に臆する母親達。
ところが子供達は慣れたものだった。
「ディアのおじいちゃん!すっごく美味しいよ!」
「ティムのおじいちゃん、ケーキまだ!?」
「ケーキはもう少し後でね。それまで楽しんで下さい。」
「僕フィリアと遊びた~い。」
「あっ、私も!」
何度か遊びに来た事のある子供達だ。
黒豹でも怖がらずに遊んでいた。
「分かりました。フィリア!」
呼ばれて駆けつけるフィリア。
子供達の相手を頼まれ、喜んで引き受ける。
「パパ、噛まないようにちゃんと言っといてよ?」
「ソフィア……。フィリアがそんな事すると思ってるんですか?」
「一応よ一応。子供達は慣れてるけど、お母さん達は初めてだもの。」
「大丈夫ですよ。あ、ほら、そんなこと言うからへそ曲げたじゃないですか。え?ぷっ、あはははは、」
突然笑った父親に首を傾げるソフィア。
ハッとして問い質す。
「何て言ったのよ!私のこと馬鹿にしたんでしょ!」
「ふ、老けたシルビアのくせにって、あははは、」
「言ったわね!?これでも同世代より若く見られてるんだから!」
フィリアを睨み怒り出す。
「なに喧嘩してんのよ。動物相手に馬鹿みたいよ?」
シルビアが呆れて立っていた。
「だって私のこと老けたママって言ったのよ!?」
「事実でしょ。ディ~ア、ちょっと隣にいらっしゃ~い。」
軽く流してディアを連れて行く。
「娘に対してあの言いぐさ!自分が若くなったからってムカつく!」
「まあ確かに事実ですからね。でも良いじゃないですか。昔のママより若く見えますよ。」
ウインクし、シャスタも笑って隣の部屋に戻って行った。
「パ、パパまであんなこと言って!まったく、娘を何だと──」
母親達の視線に気づき、苦笑する。
「おじいちゃんって……?パパって……何……?」
「あ、あはは、んー……、今度出す本を見れば分かる……かな?」
良く分からないと言った顔をしている母親達。
何とかごまかしパーティーを続ける。
隣に連れて行かれたディアはそこにガルダの姿を発見した。
満面の笑みで飛びついたディアを、ガルダが笑って抱きかかえる。
親子のように見える二人に微笑むシルビア達。
「誕生日おめでとう、ディアちゃん。はい、プレゼント。」
喜んで受け取ったディアが、プレゼントを見て大喜びする。
「格好いい!ありがとうガルダ!」
「どう致しまして。着けてあげましょうか?」
大きく頷いたディアの左中指に、鷲を象ったシルバーのリングがはめられた。
「何で中指なの!?薬指じゃないの!?婚約指輪なんでしょ!?」
「えっ!?そ、そんなつもりじゃ……。」
ぷくっと膨れたディアをシルビアがなだめる。
「婚約指輪は大人になってから貰いなさいね。今から貰ったらサイズが合わなくなっちゃうわよ?」
それで納得したディアが、ママに見せると言って出て行った。
「んー、結構本気みたいね。」
「でも今のうちでしょ?大人になったら忘れますよ。」
「忘れなかったらどうする?ガルダ、本気でお嫁に貰っちゃう?」
笑ってシルビアが尋ねる。
「そ、それは無いと思いますよ。ディアちゃんは鷲が好きだから言ってるだけで……。」
「まあね~。実際ペアになるかどうかは大人になるまで分からないし……。」
「ガルダと人間のペアはねぇだろ。あいつのミスも無くなったしよ。」
「分からないわよ~?ミスが無くなったの去年だし。ディアはもう産まれてたでしょ?あり得るかもね~。」
「な、無い事を祈りますよ。」
と、頬を掻く創造神のシェンだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます