二人の伝記

【掘り出される過去の二人】

6月某日。

シャスタとシルビアの伝記が発行された。

タイトルは【シャスタとシルビア 愛の歴史】


事実を元にしたフィクションとして出版された本。

その反響は大きかった。



フィクションとは思えない内容に、芸能業界が調査を開始する。


掘り出されたのはクレルモン時代の雑誌。

ラウと共演した映画の、謎の女性を特集した物だった。


同じ姿の女性に世間が騒然とする。



「あはは、騒がれれば騒がれるほど売上が延びるわね。」



「ママは楽観的ね。でも信憑性はイマイチだから──ま、いっか。」



と、ソフィアも楽観的だった。

まあ、バレても構わないという姿勢で出したのだから問題はない。



次に掘り出されたのは資産家マクファーソン。


20数年前までは実在していた人物である。

その資料は膨大だった。



「やはりマクファーソンは有名すぎましたね。新聞・雑誌に載りまくりでしたから……。」



「そうね~。でも私の事ばっかり掘り出しちゃって……。貴方の事はどう思ってるのかしらね。」



「私の事は本当にフィクションだと思ってるんじゃないですか?現実離れしすぎですからね。」



と、ちょっと物足りなそうにしていたシャスタだが、ナイト2000の映像も掘り出された。



どこにあったのか、街中を追跡しているシーンやジャンプしているシーン。

驚異的な性能が映し出されていた。


次いで、当時ナイト財団が手掛けていたドリームカーの事も調べられ、人格を持つコンピュータの存在が明らかとなった。



「すごいわねぇ。貴方も最先端行ってたけど、今の時代じゃ簡単に調べられるのね。」



「それはほら、科学も進歩していますから。私はもう時代遅れですね……。」



落ち込みかけたシャスタをシルビアが励ます。



「そんな事ないわよ。世間の科学はまだ私達に追いついていないわ。貴方は知識の神としてこれまで以上に膨大な知識を持ってるし……私だって世間の科学者には負けていない。全然時代遅れなんかじゃないわよ。」



自慢のボディと頭脳はまだまだ最先端を行っている。

そう聞いたシャスタが笑顔になる。



「なぁに、その顔。最先端を行ってたのはナイト2000でしょ?貴方はもう完全な人間なのに。」



くすくす笑う彼女に照れるシャスタ。



「私の自慢でしたからね。でもここまで掘り出されるとは思っていませんでした。詳しく書きすぎたんでしょうか。」



「そうね。でも良いじゃない。私達の思い出だもの。私達の長~い歴史……。」



ふふっと笑って寄り添うシルビア。

そうですねと微笑み彼女を慈しむ。


それからもいろんな情報が掘り出された。

さすがに神になった話は信じられていなかったが、あのロドリゲスが暴露した。


初めて対戦した試合はイベントではなく本当の試合だった事。

前回の試合では本物のナイフを使っていた事。


自分の体裁など関係なく、あいつらは化け物なんだと訴えていた。


美男美女の軍団が化け物とは考えにくい。

それならばやはり神なのだと世間が納得した。


といっても、本物だとは考えられていない。



「けどよぉ、分身の事まで書くか~?」



「書かなければ不自然でしょう?熱愛溺愛の私達が貴方達とイチャついていたら。それとも書かずにイチャつき禁止にすれば良かったですか?」



「そ、それは困る!いや、書いてくれて良かったよな!わははっ、シャスタ様々だぜ!」



現金なんだからと笑われて。

イチャつけるならそれでも良いと胸を張るシヴァだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る