第13話 Battle - ヒーラー vs 魔物

「ハー!」

 小さいメスの女の子は、可愛らしい杖を振って、可愛らしい魔弾を放って来る。

 それは私の灰色の肌に当たってはじけて霧散した。

「……」

 当たったところから煙が上がってる。

「guaaa!!!!!!」

 胸を押さえて体をよじってみる。

「無理して痛い振りしなくていいって!」

「なんか……悪いなと思って」

「今の……私が使える最上級の攻撃魔法だったんだけどな……」

 この一撃であきらめたらしい。杖を降ろした。

「私、攻撃魔法苦手なんだ。全然うまく使えない」

「そっちの方が良いんじゃない? 攻撃できても良いことないって」

 なんか普通に話しかけられた。

「怖くないの? 意外と心許してくれてる?」

 自分の大きい体を指さす。

 目の前のメスは女の子らしいけど、私は大きい。

 彼女等のオスより大きい。

「なんかもう……やけ?」

「貴女の恋人を犯したんだよ?」

「ああ…あなたも察するのが上手なんだ…」

「まあ、複雑な関係みたいだけど」

「複雑じゃないよ。私が頼りなくて、彼がクソなだけ。それから、したたかな魔法使いがいた」

「まだすで生きてるよ。彼女」

「そっか」

「あと、セクシーな貴女がいた」

「セクシー? 私が」

「いいな、強いし、スタイルいいし」

「魔物にそんなこと言う人初めてだと思うよ」

「みんな見る目がないんだね。貴女みたいになりたい」

「……それじゃあ私は……貴女みたいになってみたい。ちょっとだけ」

「ずっとはしんどいかもね」

「お互いね」

「あはは」

「……」

 杖を持つ手に力が入る。

「私は……殺されるの? それとも生け捕り?」

「巣の方針では生け捕りかな……あとは、私の気分次第」

「いいよ、どっちでも……嘘、やっぱり逃がしてほしい」

「そうだね。その方が良いよ」

「あの男の人は……元気?」

「兄さんのこと?」

「兄妹なの?」

「血はつながってないけど、群れのキョウダイ……で、兄さんがどうかした? 元気そうだったと思うけど。今も多分、負けてなければ元気」

 剣士か兄さんのどっちかが元気じゃなくなってるはずだ。

 私は兄さんの勝ちに百賭ける。

「いや、別に……なんでもない。変なこと聞いた」

「気に入ったの?」

「気に入──てはないかな。すごい、恐ろしい存在だと思う」

 彼女たちにとっては当然恐ろしい存在だろう。

 自分たちに襲い掛かる魔物。

「あなたは──付いてないから、その分怖くない」

「立派な穴が付いてるけどね」

「……ごめん、付いてないとか言っちゃって。それじゃあ、まるで私たちが足りないみたいだもんね」

 何か自分の中の価値観に納得したらしい。

「じゃあ、私逃げてもいい?」

「うん、元気でね」

「これからは……元気に暮らせると思う」

「なら……私も良かった」

 なんか久々に女の子と仲良く話せた気がする。

 兄さんしか気の合う人がいないから。

「ねえ、私たちって友達?」

 出来たことなくて分からないので、聞いてみる。

「んー…それはちょっと気が早いかな」

「あは、気が早かったか」

「でも、そうだね。友達に成れたらいいね」

 半身で振り返ったままの表情が、穏やかな光に包まれていた。

「ごめんね、呼び止めて。じゃあ、気を付けてね、まだ森の中だから──うちらの仲間に襲われないように──」

 木から飛び出してくる影がある。

 その影は──女の子へと襲い掛かる

「──兄さん?」

「すまん。思っていたより魔力を消費してしまったみたいで──抑えられなくなった」

 兄さんは私が経った今友達になったばかりの女の子を犯し始めた。

「助けて」

 兄さんの巨体の下から、私に助けを求める女の子。

「ごめん──」

 他のオスだったら止めに入ったかもしれないけど、兄さんならまあいいかも。

 うちら──そういう生き物だから。

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