第12話 Battle - 勇者 vs 魔物

 聖剣と腕で戦うのは……少し危険か。

 ペニスに力を込めて、いきり立たせることにする。

「ふざけてるのか……?」

「勃起したレイプ魔のペニス強度は、アヴァロンに匹敵すると聞いたことはないか?」

 言って自分で笑ってしまう。なんか面白くて。

「くッ……」

 余計ふざけてると思われたのか、剣士の表情に怒りがにじむ。

 素早い接近、振り下ろされる聖剣──ペニスで受け止める。

 まばゆい閃光と土煙が辺りを包んだ。

「な……そんなばかな!」

 それらが晴れると拮抗した二つの剣先が現れる。

「gra……!」

 普段の狩で鍛え抜かれた腰を振って、剣を弾き飛ばす。

「haa!」

 体を回して、ペニスを込ん棒のように振る。男の胴に当たって……甲冑との間で火花が舞う……男の身体が森の向こうに飛んでいく。

「hu……」

 飛んでいった方向に走る。ペニスをしごきながら。

 落下地点にたどり着くと、丁度剣を支えに勇者が立ち上がったところだった。

 よし──そろそろ行けるか。

 まだ距離はあるが準備は整った。

 膨張したペニスの先を向ける。

「huraaa!!!!!」

 喰らえ──精子咆カム・キャノン

 その威力は山を粉砕し──新たな地平線を生み出すとさえ言われている。

 仲間内の間では。世間的には知名度がない魔物なので。

「──!」

 剣士は一言も発せなかった。

 杖代わりにしていた聖剣を、盾にして構えるのが精いっぱいだった。

 この動作がかろうじて剣士の命を救ったのだが。

 白い濁流にのみ込まれていく。


 森に一本の穴が開いた。空から見下ろせば、白い線が森を貫いたのが良く見えただろう。

 砲弾は遠くの山に当たって消えた。

 ──剣士は途中の森で倒れていた。

「なんて……無駄に……ハイスペックなんだ……!」

 ボロボロの身体、聖なる鎧も剥がれ落ちていた。

 縦にしていた聖剣は折れてしまっている。

「お前……多分だけど、魔王より強いよ」

「魔王か」

 興味ない。俺たちの命はただ、人間を犯すためにある。

「勇者である俺が言うことではないが……こんな森でくすぶってる存在じゃないよ。お前ら」

「その言葉が最後の置き土産か」

「……殺すのか?」

「いや、別に……僕らに手を出さないなら、殺す必要はないよ」

「殺してくれ……そっちの方が清々する」

 折れた聖剣を投げ捨てた。僕の脚に当たって落ちた。

 それを拾って握ってみる。やはり僕には似合わない。

「返すよ……持っておきなさい」

 受け取ってはくれなかったから、剣士の足元に置いておく。

「僕も、君みたいな勇者に生まれたかった」

「……僕のどこが勇者なんだ? ……魔物に負けた、只の下種野郎だ」

「ああ、だけど──その剣は、君が持ってこそ映えるものだよ」

 僕の巨体には似合わない。

「それじゃあ──君も大事なモノを探すといいよ」

 立ち去ろうとしたけど呼び止められた。

「……どういうことだ?」

 項垂れた瞳には影が差していた。

「見失ってるみたいだから」

「……」

「あるはずだろ? 君にも何か、大事なモノが」

 僕には──あるだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る