第5話 Forest

 森を進んで夜になった。

 時折、旅の序盤に出会ったようなモンスターたちに出会った。

 でも、今の私たちの魔力を恐れて、森の影から見てるだけで襲ってはこなかった。

「ここら辺でいいか」

 森の中に丁度いい草原があった。

 荷物を降ろして薪を囲む。街で貰った携帯食を食べる。

「あはは」

 楽しそうに話す二人。私はちょっと憂鬱。

 実を言うと……私はまだこういう森が苦手だ。旅には慣れたけど、夜になるとホームシック気味になるというか……最近は特に故郷の高原が恋しい。

 食べ終わると草原に寝転んで野宿をする。

「……」

 寝れない。昨日も眠れなかったのに。歩いて疲れたはずなのに……。

 ぼんやりと見つめていた薪の火も消えた頃。

 ガサゴソ。

 どこ行くんだろ? トイレかな?

 立ち上がって森の中に消えていくアレク。でも剣を持っていた。

 トイレならそこら辺でするだけなのに。

「……」

 気になった私は、何となく追いかけてみることにする。


 真っ暗な森を進んでいくアレク。私は指先に光の粒をつけて……足元を照らす。

 不意に立ち止まるアレク。

 ん……なんだろう?

 光をかざすと、暗闇の中に……一瞬魔物の姿が見えた。急いで光を消す。

 振り向くアレク。

「なんでいるんだ?」

 驚いた顔をしている。でも今はそれどころじゃない。

 見たことない魔物だった。強さが分からないから警戒するに越したことはない。

 私からは良く見えないけど、アレクには魔物が見えてるだろう。

 もう光のせいでこっちの存在はバレている。

 ──ガサっと音がして、暗闇から姿が現れる。

 人型の魔物はアレクに襲い掛かる。

「くそっ!」

 押し倒されたアレク。

「アレク!」

 暗がりにぼんやりと魔物の灰色の肌が浮かんでいる。

 ……女性に見える。身体にラインが入っている。見たところ鍵爪とか……凶器に見えるような特徴は見えない。

 アレクに馬乗りになって押さえつけようとしている。アレクは彼女の腕を掴んで応戦する。

「逃げろ!」

 振り向いて言うアレク。

「でも!」

 どうしたらいいか分からない。

 簡単な攻撃魔法なら使えるけど、アレクにまで当たってしまうかも。

 初遭遇の魔物だから習性も分からないし。

 ……きっとアレクならそんな簡単に負けはしないと思うけど。

「アイリーン呼んでくる!」

 結局私にできるのは助けを呼びに行くことぐらいだった。

 来た道を走る。木の根に引っかかってこけそうになる。

 暗い森の中は方向が分からなくて迷いそうだ。ライトを頼りに走ると、視界が開けて、元居た草原まで戻ることが出来た。

「アイリーン!」

 でもそこにアイリーンの姿はなく、荷物だけが残されていた。

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