ED
「これが最初アイツに会った時の話だ。」
「父さん、ずいぶんエキセントリックだったんだね。」
「息子のお前が言うかよ……まあ、その通りなんだが。」
話が少し長かったためか、コーヒーが冷めてしまったのに気づいた。
「爺さん、コーヒー冷めちゃったから入れ直すよ。」
「おう。」
「お待たせ。バイト、持って行って。」
「ミャハ、あいよー」
「うん?えらく早いな。ミル回す音も聞こえなかったがどうした?」
「いいから飲んでよ。」
「む……む!?」
「それでしょ、父さんの味。」
「お前……どうやって?」
「やっぱり合ってた。これからはこれを出すよ。」
話の最中に見つけた青い缶を見せながら言うと、ブール爺さんが口角を上げ頷いた。
「そう、このコーヒーとこの細い練乳パンだ。」
「俺にはよくわからないけど思い出の品ってやつなんだね。」
「そうだ、これがあの時の食事だよ。……今食っても美味いなぁ、ボイドよぅ。」
「俺は息子のヴァリアントだよ、爺さん。」
「ああ、そうだな。もう居ねぇんだよな。アイツは……。」
「毎度ありー。」
ブール爺さんが会計をして帰った。
「あの話でよくわかったニャア、オーナー。」
「うん。話の途中から探してた。さあ、時間になったから今日はもう閉めようか。」
「ミャハ、アイサー。」
店を閉じバイトも帰して、店の片付けをする。
「今日は父さんがこの世界に来てから初めて会った時の話を聞いたよ。……でもひどいな。あの練乳パンのセット料金も大概だったけど、ウチのコーヒーの料金とあの缶コーヒー。席代引いても値段が数倍違うじゃないか。」
と、写真立てに映る父さんへ報告した。
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