3
帰路の途中、ミュータント化していない鹿を見つけたので
「さすがだねぇー。」
血抜きや解体を手伝わず見学だけしている約一名。
「手伝わないなら肉やらんぞ。」
「むぅー。ジビエ食えないのはちょっとショックだなぁ。」
といって残滓となった内蔵などのゴミを吸収するかのように回収していく。何度見ても慣れねぇ。
「背ロース
そうだろうよ。一番上等な部分だからな。俺が食うはずだったんだけどな。
というかだ。
このサバイバル状態で、たき火の上に網敷いて焼き肉する馬鹿がどこの世界に居るんだと。
「……ここにいたよ畜生。」
バラ肉がうめえ。
――
「おう、ボイド。もうすぐ街が見える所まで着いたぞ。」
「ほんとか〜じゃあ休憩しようよ〜。」
歩き慣れていないのかすぐにヘバる奴だ。
俺はノロマのワガママを聞いてやることにした。
街道に出たことで上手くすれば足になるものが通るからだ。
「おい、ボイド。鹿肉の残りと量の多い酒を出しておけ。」
「量が多ければ良いの?」
それじゃあとアイツが出してきたのはペットボトルに入った4リットルの焼酎だった。
予想外の量にちょっと驚いたが、これで釣りが出来るだろうと確信したね。
釣りの仕方は簡単だ。路肩で看板を置き、焼き肉パーティーをする。それだけだ。
看板には"マチョモロカ"と書いた。つまるところがヒッチハイクだな。
「かーっ!
何台かが通り過ぎた後、"水瓶"というハンターグループのバンに乗ることが出来た。
「ここんとこフルボーグ用の
といってアイツに追加で出させた4リットルの焼酎をあおる水瓶のメンバー。
「とと、もったいねえ。」
こぼれた酒を吸おうとして「行儀悪い!」と頭を叩かれている。
「マチョモロカまでは1時間ってところかな。」
ナビゲーターがGPSと地図を確認して教えてくれた。
「すまんな、寄り道をさせる形になっちまって。」
「いやいや、こんなウマい酒が手に入るならお安いご用ってヤツよ。おい、エリアてめェ!俺の分を残しとけっつったろ!」
「悪り、もう飲んじまったぜ。いや生き返るゥ〜」
殴りかかる運転手。それを空になった4リットルのボトルで受けたエリアと呼ばれた男が社内で取っ組み合いを始めた。
「アーク、エリア。いい加減にしないか。」
ナビゲーターが低い声で怒ると途端に止め、シュンとする2人。
しょうがねえ。助け船を出すか。
「ボイド、焼酎出せるか。」
「ん〜。これで打ち止め〜。」とルーフの銃座から2リットルのボトルを投げてよこしてきた。
「そういうわけだ。これやるから真っ当に運転しろ。」
チッと舌打ちし、奪うようにボトルを取って運転席に戻る
いくら車両とリンクしているとはいえ喧嘩に集中されると運転に支障がでるからな。
あっという間に1時間が過ぎ、マチョモロカで降ろしてもらった。
「次拾うときも酒頼むぜー。」
「またな〜。」
走り去っていく"水瓶"を見送り、傭兵ギルドに向かう。
アイツ?来たきゃ勝手に付いてくると思って放置だ。
こうしてやっとの思いで傭兵ギルドの事務所に着いた。
ここは戦闘を主とする者と、合法・非合法問わずきな臭い依頼が飛び交う場所……ではない。
ここに直接来るくらいならばネットにアクセスした方が早いし楽だからだ。
だいいち、依頼を表に出すわけにはいかんだろ。
俺が直接来たのにはそれなりに理由がある。
誰かさんに持ってかれて文無しになっちまったからな。
預けてる荷物の回収も兼ねて預金を下ろすことにしたんだ。
あの野郎、ヒッチハイクの時に「なんだ。財布なら返すよ?」とか言って返してきたが
まあ、現金以外はすべて無事だったけどよ。パン・コーヒー代にしちゃちっと高い気がするんだけどな?
まあいいさ。命が掛かってたんだから細けえ事は無しにしようか。
預金が幾らか残っていたとはいえ維持費考えりゃカツカツだ。
次の依頼を早く探さねえと、と考えながら順番待ちしていたら飽きたのか「それじゃ、なんか面白いことあったら教えてよ。」と言ってアイツは事務所を離れ、俺は丁度空いた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます