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 帰路の途中、ミュータント化していない鹿を見つけたので小銃9ミリで頭部を撃ち抜き、食料にした。

「さすがだねぇー。」

 血抜きや解体を手伝わず見学だけしている約一名。

「手伝わないなら肉やらんぞ。」

「むぅー。ジビエ食えないのはちょっとショックだなぁ。」

 といって残滓となった内蔵などのゴミを吸収するかのように回収していく。何度見ても慣れねぇ。



「背ロース美味うまッ。」

 そうだろうよ。一番上等な部分だからな。俺が食うはずだったんだけどな。


 というかだ。

 このサバイバル状態で、たき火の上に網敷いて焼き肉する馬鹿がどこの世界に居るんだと。

「……ここにいたよ畜生。」

 バラ肉がうめえ。


 ――

 


「おう、ボイド。もうすぐ街が見える所まで着いたぞ。」

「ほんとか〜じゃあ休憩しようよ〜。」

 歩き慣れていないのかすぐにヘバる奴だ。



 俺はノロマのワガママを聞いてやることにした。

 街道に出たことで上手くすれば足になるものが通るからだ。

「おい、ボイド。鹿肉の残りと量の多い酒を出しておけ。」

「量が多ければ良いの?」


 それじゃあとアイツが出してきたのはペットボトルに入った4リットルの焼酎だった。

 予想外の量にちょっと驚いたが、これで釣りが出来るだろうと確信したね。


 釣りの仕方は簡単だ。路肩で看板を置き、焼き肉パーティーをする。それだけだ。

 看板には"マチョモロカ"と書いた。つまるところがヒッチハイクだな。




「かーっ!美味うンめェーッ!」

 何台かが通り過ぎた後、"水瓶"というハンターグループのバンに乗ることが出来た。


「ここんとこフルボーグ用の混合アルコール混ぜ物しか置いてねえ店ばっかで生身の俺じゃ飲めなかったんだよなーッ。」

 といってアイツに追加で出させた4リットルの焼酎をあおる水瓶のメンバー。


「とと、もったいねえ。」

 こぼれた酒を吸おうとして「行儀悪い!」と頭を叩かれている。


「マチョモロカまでは1時間ってところかな。」

 ナビゲーターがGPSと地図を確認して教えてくれた。

「すまんな、寄り道をさせる形になっちまって。」

「いやいや、こんなウマい酒が手に入るならお安いご用ってヤツよ。おい、エリアてめェ!俺の分を残しとけっつったろ!」

「悪り、もう飲んじまったぜ。いや生き返るゥ〜」


 殴りかかる運転手。それを空になった4リットルのボトルで受けたエリアと呼ばれた男が社内で取っ組み合いを始めた。


「アーク、エリア。いい加減にしないか。」

 ナビゲーターが低い声で怒ると途端に止め、シュンとする2人。

 しょうがねえ。助け船を出すか。


「ボイド、焼酎出せるか。」

「ん〜。これで打ち止め〜。」とルーフの銃座から2リットルのボトルを投げてよこしてきた。


「そういうわけだ。これやるから真っ当に運転しろ。」

 チッと舌打ちし、奪うようにボトルを取って運転席に戻るアークエリアじゃないほう

 いくら車両とリンクしているとはいえ喧嘩に集中されると運転に支障がでるからな。



 あっという間に1時間が過ぎ、マチョモロカで降ろしてもらった。


「次拾うときも酒頼むぜー。」

「またな〜。」

 走り去っていく"水瓶"を見送り、傭兵ギルドに向かう。

 アイツ?来たきゃ勝手に付いてくると思って放置だ。



 こうしてやっとの思いで傭兵ギルドの事務所に着いた。

 ここは戦闘を主とする者と、合法・非合法問わずきな臭い依頼が飛び交う場所……ではない。

 ここに直接来るくらいならばネットにアクセスした方が早いし楽だからだ。

 だいいち、依頼を表に出すわけにはいかんだろ。


 俺が直接来たのにはそれなりに理由がある。

 誰かさんに持ってかれて文無しになっちまったからな。

 預けてる荷物の回収も兼ねて預金を下ろすことにしたんだ。


 あの野郎、ヒッチハイクの時に「なんだ。財布なら返すよ?」とか言って返してきたがカネが全額無くなってんだよ。

 まあ、現金以外はすべて無事だったけどよ。パン・コーヒー代にしちゃちっと高い気がするんだけどな?

 まあいいさ。命が掛かってたんだから細けえ事は無しにしようか。



 預金が幾らか残っていたとはいえ維持費考えりゃカツカツだ。

 次の依頼を早く探さねえと、と考えながら順番待ちしていたら飽きたのか「それじゃ、なんか面白いことあったら教えてよ。」と言ってアイツは事務所を離れ、俺は丁度空いた個室ブースに今回の報酬受け取りと次の依頼選定をするべく入った。

 

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