草www

 コピー用紙はオーバーテクノロジーなので、手漉き和紙を選択した……が、意外と高い。

 

 いや、考えれば人件費掛かってるんだから当然なわけで。

 しかも生産が軌道に乗れば売れる商品だからなぁ。どうしようか。



 

「俺は便利屋じゃないんだがな。」


 フォールドの兄貴である。

 なんとなく商売人に製法渡すより、地域に密着している連中に渡す方が良い気がしたからだ。

 で、原材料の調達をカークの所、オーショウの商会に任せると。


 そんな話をしたのだが、「モノがねえと分からねえ。」との事だったのでいったん保留とさせて貰った。

 商売の話ということでカークとの商談に付き合って貰う約束も取り付け、孤児院を出て再度市場調査を行うことにした。

 前回は食料を中心に見たので転移もの定番の物品へ目を向けてみる。

 

 石鹸とか。

 作る方は原料のアルカリを作るのに木灰の上澄みとか貝殻をめっちゃ高温で燃やす程度の知識しか無いけどな。

 

 ゴムとか。

 酢を混ぜるのは知ってるが、その原料のアルコールが市場に出回ってないから造れないんだよな。

 

 チーズとか。

 山羊は居るのを見たけど汁絞るレモンも胃袋提供する牛もここには居ないんだよな。

 

 蒸留酒とか。

 機械作る銅はあるけど足りてなさそうだし、加工内容知らないけどな。

 

 サトウキビとか。

 熱帯の気候じゃないっぽいから生産には向かないな。

 

 水車とか。

 あんなもん公共事業やろがい。


 ポンプとか。

 鋼鉄ゥー。


 だめだこりゃ。(オチ音は各自で脳内に流すこと。)



 ジャガイモやキャッサバ芋は毒持ちだからあまり流通させたくないしなぁ。

 パンとか酒の原料的に大麦が主食なのは判明したんだけどそれだけなんだよなぁ。


 炭鉱はあるけど自給自足状態で、別の街の特産って言ってたし、鉄鉱石も同様。

 銅山は近くにあるって言ってたけど汚染されてんだろうなぁ。

 銅山なんて小学生の時に足尾銅山へ社会見学行ったきりで、なんか植林してるらしい程度しか覚えてねーや。


 しょうがない。ゴールドラッシュで一番儲けたと言われるツルハシでも用意するか。

 あと鉄が普及し始めた頃なら耐火レンガ。あれは量売れるはずだ。




 約束の日、フォールドの兄貴と一緒にカークの所に行くと、商会長のオーショウさんと副会長のヒシヤさんを紹介された。

 行商との取引はヒシヤさんの部門が行っているのだそうだ。

 しかしカーク。外回りのトップだなんてお前さん、そんな上の立場だったんかい。


「それで、どんなモノを用意してきてくれたかな。」

 

 フォールドの兄貴が絡む紙漉きの話は最後にして、持ってきたツルハシと耐火レンガを出した。

 鉄鉱石はあるのに鉄が普及しない原因は炉の温度が低くて鉄を上手く取り出せないからだという推測は当たっていたらしく、結構な高値をつけ、継続的な取引をお願いされた。

 ツルハシは鋼鉄製なので硬さに驚かれたが……うん。用意した分は買ってもらったけどこれ以上は要らないと言われた。


 

 で、本日の主題。紙漉き。


 授業に使うのであろう小型の紙漉きキットがケース売りしていたので購入しておいた。

 某3分クッキングみたいに時間が掛かる部分はあらかじめ用意しておいて実演。

 そしたら食いつく食いつく。

 

 紙が小さいとか藁が思ったより茶色いとか乾燥が足りなくて若干文字がにじむなどのトラブルがあったが、その辺は必死にプレゼンした。

 その甲斐あって商会とファミリー間で契約が結ばれはしたのだが……

 製造担当となるファミリー側に課題が残った。


「アルカリとか言うヤツの確保がキチぃな。」

「木灰でも一応取れるので問題無いと思いますけど。」

「木灰取るためだけに森を拓くわけにもいかんだろ。このままじゃ商品とするのは無理だ。それから漂白剤な。」

「繊維がしっかり取れれば問題無いと思いますよ。」

「その取るのが大変なんじゃねえか。」


 というわけで、共同研究という形になったのだ。

 そして主原料の1つ、繊維抽出のための苛性ソーダ強アルカリは当面俺経由で購入する事になった。木灰はコスト高いからね。

 海近ければ貝殻とかから取れるんだけど。


「しかし坊主、オメェただの行商じゃねえな?どこの出だ?」

「すっごい遠いとこ。船が遭難してここに辿り着いたから帰り方も分からないよ。」

「……っと、そうかい。そいつぁ悪いこと聞いた。だが駆け出しにしちゃちっと知識がありすぎる。」

「そうだね。でも俺が食いつないでいくために全部は開示しないよ?」

「チッ。しっかりしてやがる。それでオーショウさんトコはアルカリとやらの確保ってことでいいかい?」

「ああ、正直旨味しかない話なんでな。それくらいなら十分ペイできる。タツ君の言うところによれば他にも利用価値があるそうだからな。優先して確保するよう指示する。」

「となると仕入れ元にはしばらく滞在して貰わないとな。」

 

 うーむ。行商やるつもりだったのに自分が仕入れ先になって固定の住所が必要になるとは考えてなかった。

 代替手段が確保できるまで移動範囲が商会のテリトリー内に制限されちゃったよ。

 

 しょうがない。その範囲で倉庫付き借家を探すか……。



 大商い(?)が終わったので宿に向かう途中、ちょっと気になった事があったので商業街や職人街、色街を通る。

 色街では立ちんぼや客引きが通行人を通せんぼしているが、俺は無視された。

 ……まあまだ見た目中学生くらいだもんな。それに精神が前世で訓練されすぎて人間ヒューマンじゃピクリとも来ない。

 我ながら業が深い……。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る