第17話  盗賊A 森に帰ってきて新たな仲間を呼び出す。


夜気の冷たさがまだ残る森に戻った。

 

霧は薄く、葉の裏の露が月明かりを跳ね返す。俺はあの店を出て直ぐに迷いの森に戻ってきていた。


「あそこで勇賢者の石を買えるならラッキーだな」


ゲーム時代じゃこちらから欲しい物を希望するなんて出来なかったけど現実であればこういった事も出来るんだというのを頭に入れてなかった。

もし仮に金で解決できるのであれば無駄な危険を犯さなくて済む。


「だけどそこまで期待はしないでおこう」



しかし主要なあのアイテムがそう簡単に手に入れられるとは思わないし、手に入れても俺に来る可能性は低いと思っている。


まぁ今なら勇賢者の石が無くても不都合はないからこのままでもいい気はするしな。







「……集合」


 足元の影が波紋のように揺れ、黒装束の影たちが次々と立ち上がる。

迷いの森で待っていた俺の仲間であるポーンシーフ達がぞろぞろと集まってきた。

全員、無言で膝をつき、同時に顔を上げるその動きには一切の乱れが見られない。



肩のクロノが小さく鳴き、俺の呼吸に合わせて翼を一度だけ打った。

全員が集合する了解の合図。いつも通り無駄がない。




「待機中の報告。回収物、前へ」



ポーンシーフたちが手早く小袋を差し出す。その小袋は整頓されており口は色紐で結ばれ、俺のルールどおりに整頓されている。爪、牙、毛皮――それに混じって、黒い板が光を返した。



……やっぱり俺がいなくても手に入るドロップアイテムの確率は変わらないようだ。

俺がいなくてもテイムカードやスキルの宝玉は変わらずドロップしているし俺がその場にいなくてもアイテムは手に入れる事が出来るのは朗報だ。





「全部で10枚‥ということは俺がいない時も1000体のフォレストウルフを倒してたのか?」


「「「キー!!」」」



「流石だな。俺がいなくてもキチンと結果を残す。今後とも宜しく頼む」





闇取引商店で手放した10枚が早くも戻ってきた。計算は合っているし、あいつらが千体狩れば、1%の確率で10枚。

 

“確率の底”は、やはり壊れていない。


俺は笑うしかなかった。この世界は、まるで俺のために数字を合わせてくる。



「……よくやった。次は確認だ」


クロノが小さく鳴き、ポーンシーフたちが一斉に間を開ける。

霧が薄れ、地面が見えた。俺は10枚のカードを順に広げる。


テイムカードのフォレストウルフ。表面の紋様が淡く脈打ち、金線が浮かぶ。軽く息を吐いて、一枚を掲げた。


「【テイム召喚】」


低く、短く。カードが弾けるように光り、霧の中に灰毛が走った。

爪が地を踏みしめ、赤い瞳がこちらを見る。


1体。2体。3体――10体。

 

フォレストウルフの群れが、列を成して現れた。その動きに無駄がなく、まるで最初から命令を知っているかのようだ。



「キー!!」


「「ワン!」」



「‥テイムカードのモンスター達もキチンとスキルが反映してるようだな」




クロノを中心に今召喚したフォレストウルフ達はクロノが指示をするように整列して歩いたり座ったりと行動をしている。


俺が指示をするでもなくクロノは俺の為にフォレストウルフ達を動かしているのだ。


「流石クロノだな」


「キー」



クロノが短く鳴く。「当然だ」と言っているような声だった。



「フォレストウルフは‥ゲームの時にはテイムした事がないけどスキル【疾風】を持ってるんだな」




召喚したフォレストウルフのステータスはこんな感じだ。




ーーーーーーーーーーーーーー


名前  フォレストウルフ

LV   1

スキル 疾風


称号 テイムカードモンスター


【疾風】

スキルを持っているだけで早く行動する事ができる。発動するとさらに風のように早く動く事が出来る



【テイムカードモンスター】

死亡しても一定時間経過すると復活する。



ーーーーーーーーーーーーーー




テイムカード以外の仲間は1度死んでしまったら終わりだ。

どれだけ強くても1度死んでしまえば終わり。

勇賢者の石の能力で復活させる事が出来たけどそれも時間が経過してしまったり、仲間が死に過ぎて時間やMPが持たなくてそのまんまロストしてしまうなんてしょっちゅうだ。


だからこそアルタイルは復活する能力の【蘇生の光】の熟練度をあげてたんだろう。

蘇生の光はゲーム時代に熟練度を上げるのは必須だったし。


ただ時間が限られてるイベントやイベント内容によっては蘇生の光が使用できない時もあるからテイムカードで召喚できるモンスターは重宝されるのは当然の成り行きだ。







「俺も昔は沢山ロストしたな‥」



仲間になった【伯爵】や【魔王幹部】みたいなレアキャラは他のプレイヤーも率先してロストしに来る。

レアキャラを如何に他のプレイヤーにロストさせないかもあのゲームの醍醐味の1つだった。





「現実なら尚更強いキャラやモンスターは優先されて倒されてしまう。そんなの俺でも当たり前のように狙うしな」




まだ【準備段階】だから他のプレイヤーや魔王の事を考える時期ではないかもしれないがいずれ戦う時は訪れるはずだ。


それまでに戦力を整え、テイムカードが手に入るのであればそれを含めた戦略も考えていこう。







それから俺はフォレストウルフをもう10体。そしてポーンシーフは20体召喚しレベル上げを行った。


今回はレベルMAXになったポーンシーフ達もいたので昨日よりは早く野生のフォレストウルフ達を倒すことができて夕方には新しく召喚したモンスター達もレベルMAXになった。




「よし、次は【進化】だな」




そして更に俺は戦力を強化するのだ。




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