第18話 盗賊A 配下達を進化させる


全員がレベル上限に達し静かに待機している。

黒い影と灰の毛並みが並び、クロノを中心に呼吸が揃っていた。


 


「……まだ数が足りない。これじゃチート持ちの勇者達には敵わないぞ」



次のステップに行くにはまだ戦力が足りない。

ゲームの時のようなプレイヤーもいる可能性を考えると俺の今の状況を狙おうと思う奴は絶対にいる。


俺がもしもこの状況を傍から見ていたら脅威でしかない。


「コンテニューなんてないんだ。誰かに見つかる前に俺は手の届かない場所へと到達しなくては‥」



仮に俺がソロでも強い職業やアイテムを持ってるのであればレベルを100に行くのなんて1日で終わらせる自信がある。

俺が出来るのであれば【誰でも】できる可能性を考慮するのは普通だ。


流石にレベルが100になったキャラの性能にはアリと人間程の差が生まれてしまい簡単にゲームオーバになってしまうだろう。


そうなる前に簡単には手出しできないだけの戦力は保有しなければならない。



俺はそれからポーンシーフを全部で300体。フォレストウルフを100体分を召喚してレベルMAXの状態にした。




「よし、このぐらいの数がいれば最低ラインの戦力は賄える」






数は力だ。だけどアリがどれだけの数がいても人間のような知性のある強大な生物を倒すなんて無理な話なのも分かっている。



「だけど毒を持ってるなら象だって倒すことは出来る」




ポーンシーフ達がレベルMAXになり進化先を表示させる。


 


「まずはポーンシーフからだ」


 


俺はウィンドウを開いた。視界に並ぶ進化候補を見ると安堵の溜息が自ずと出てくる。

今回ははっきりと文字が見えるようで安心した。




【ポーンシーフ Lv.10 → 進化可能】

進化候補:

・【ビショップシーフ】(通常型)

・【アサシンシーフ】(強襲型)

・【パワーシーフ】(パワー型)

 


「……ようやく正常に読めるな。進化先も予想通りだ」


 


前回の“統合進化”の異常とは違う。今回はシステムが安定している。そして、どの進化も群れとして機能を高める内容だ。


 


「クロノ、どう見る?」


 


「キー」


 


クロノは首を傾け、影を見渡す。その鳴き声に呼応して、ポーンシーフたちが静かに前に出た。俺の意思が伝わらなくても、クロノの意図は全員に届く。


 


「そうだな、バランスが大事だ」



ポーンシーフ達は全部で300体。ゲームの際も進化先は3つ候補が出るが、その候補はレベル上げ、成長のさせ方で変化する。


今回の3つの進化先はそもそものポーンシーフからの通常通りの進化系である【ビショップシーフ】

団体で強襲してレベルをあげてた事により【アサシンシーフ】

そして荷車を持たせたことにより【パワーシーフ】


この3体が進化先として選ばれたんだろう。



「【デバフ】持ちっぽそうなのがいれば簡単だったんだけどな。今回のようなレベル上げじゃ難しかったか」



俺が目指すのは王道タイプの戦い方じゃない。搦手でもなんでも使って勝てば良いと思っている。



「その為にもまずは考察だ」




俺はこの3種類の進化先を均等に100体ずつ進化させた。



どの進化先がどんな最終形態の進化をするのか。それが分からないと話は進まないしな。


そして俺の目の前に出てきた【ウインドウ】を操作してポーンシーフ達の進化先を指定する。

するとポーンシーフ達の頭上にはウィンドウが表示されて【進化中】という表示が出て一斉に輝きはじめた。

黒い霧がポーンシーフたちの足元から噴き上がり輪郭が光の粒となって形を変えていく。


 


――金属音。


――影が裂ける音。


――そして、新たな呼吸。


 


「……これが、進化の音か」


 


霧が晴れたとき、そこに立っていたのは先ほどまでの“影”ではなかった。


ビショップシーフたちはポーンシーフの時よりも手足が長くなり、子供が大人に近づいてる印象だ。

アサシンシーフたちは小柄ではあるがスタイリッシュな見た目になり、俊敏な動きが得意そうな印象を受ける。

そしてパワーシーフはポーンシーフの体が肥大化し腕も大幅に太くなったような見た目になっていかにも力強い印象がある。



 


「……これで戦力の幅広がっていくな」


 


クロノが短く鳴き、影の中を駆け抜けた。その通過だけで全員の配置が整い、連携が完成する。個々の戦闘力では俺など到底勇者には及ばない。

レベルが上がったとしても所詮それでも【モブキャラ】の俺だ。


だけど俺が“指揮系統”の核だ。俺が中心であり、そして俺の軍隊。


 


「よし、次はフォレストウルフだな」


 


ウィンドウを開く。

100体のフォレストウルフが一斉に光り、進化候補が現れる。


 


【進化先候補】

・【ウィンドウルフ】(速度強化・疾風上位)

・【ファングウルフ】(攻撃特化)

・【ガードウルフ】(防御特化)


 


「……単純明快だな」


 


クロノが一声鳴き、フォレストウルフたちが前に出る。

その目に宿る光は、命令を待つ兵のようでもあり、“群れ”としての誇りを持った獣のようでもあった。


 


「疾風の系統を伸ばす。全員――ウィンドウルフに進化だ」


 


風が唸った。空気が弾け木の葉が舞い上がる。灰の毛並みが淡い青に変わり、足元に旋風が走る。



 


ウインドウルフたちが一斉に走るとその速さは。木々の間を駆け抜け、音の残像だけが遅れて響く。

クロノが翼を広げ、その上空で旋回する。その瞬間、フォレストウルフたちの動きが同期した。疾風と翼。群れと群れ。



 


「……これでいい」


 


俺は深く息を吐いた。夜通しの検証と強化。

だが、今の群れはもう“影と獣の寄せ集め”じゃない。クロノを中核にした、完全な“統制軍”。




「これでようやく本格的に動けるぞ。だけどまずは進化したコイツラもレベルをあげてだな?」



今回進化したモンスター達のレベル上限は30。


コイツらのレベルをMAXにするのが次の課題だ。



「そうすれば次のステップ


【迷いの森】の2階層に進もう」

 



俺の戦力強化は迷いの森の2階層からが本番だ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ゲームの最初にやられる筈のモブ盗賊。転生者の気まぐれで生き返る。 ウメとモモ[[現在執筆中]] @umeotomomo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ