僕のお父さんは消防士
荒晴/衣川鈴瑚
10首連作部門 僕のお父さんは消防士
サイレンの 音に目覚める 夜の闇 父の背中を 僕は見送る
真っ赤な服 黒いブーツの その向こう 僕らのヒーロー 今日も飛び立つ
焦げ付いた 匂いまといて 帰る父 「おかえり」の声 いつも震える
火の粉舞う 街を守りし その腕に 抱かれ眠るは 僕の特権
訓練の 声は厳しく 汗光る だけど優しい 父の眼差し
「怖いかい?」 尋ねる父に 僕は言う 「お父さんこそ 怖くないの?」と
泥まみれ 傷ついた手で 撫でる髪 無事を確かめ 涙こぼれる
消防車 遠く走り去る その後に 母と二人で 祈り捧げる
いつの日か 僕もなろうか その背中 守る強さを 心に宿し
夏の空 入道雲へと 父は言う 「平和な日こそ 一番さ」と
僕のお父さんは消防士 荒晴/衣川鈴瑚 @koromogawa
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