第26話:歪んだ誓い。

『今更出て来て、僕からまたアキを奪おうっていうのか!? その気もないのに、アキを惑わすのか!?』

「しょ、翔麻!?」


 お前が何を言いたいのか、ぜんっぜんわかんねーよ!

 お前がアキを好きだってのは知ってたさ。だから応援してたのに、何言ってんだよっ。


「潮時だ、悠希。アダム」

『了解しました。操作権限をチャンジします』

「イヴ!? ぐっ――」


 予期せぬタイミングでのブーストで、体が左右に振られる。

 メインモニターには右を掠めて飛ぶ赤いレーザーが見えた。

 本気で狙った……のか? いや、そんなハズはない。翔麻が俺を撃つなんて、そんな。


「今は混乱しているのだろう。考える時間をやれ」

「そ、それって……」

「重量級戦艦を落としている。もう一隻落とせば敗走するだろう。お前はまとわりついてくる敵機を落とせ」

「りょ、了解っ」


 翔麻。俺たち、まだ友達だよな?

 だってお前、二発目撃ってこないし……。


 その後、イヴが揚陸艦をもう一隻落とすと、帝国軍はAMAを回収して逃走し始めた。

 セイレーンⅡはそれを追うことなく、戦闘は終了。






「ちょうどいいところに戻って来たな。今から帝国元帥の有難いお言葉が聞けるぞ」


 帰投してブリッジに上がると、バーンズ艦長が機嫌悪そうにしてそう言った。

 帝国軍が全チャンネルを使って、帝国民向けになにかアナウンスをするらしい。


『帝国民の諸君。二十五年前、停戦協定を結んだ反乱軍らは、その協定を破り、自治区内の、自分らの同胞であったはずのコロニーを沈めた。何故か!』

「何故もなにも、沈めたのはお前らだろ」

『奴らはその非道を、我ら帝国に擦り付け、民衆の支持を得ようとしたのだ! コロニー8は自治区内でも、我が帝国に寄り添った方針を掲げていたこともあり、反乱軍にとってはいつ裏切るかもわからない存在だったのだろう。故にこの戦いで排除するとともに、帝国のせいにしようとしたのだ!』

「よく言うぜ」

「都合のいいシナリオっすね。ちょっと無理があると思うんすけど」


 翔麻はこんなことを信じているのか。


 でも、俺たちは帝国と解放軍の歴史なんて知らない。

 片方からしか情報を得られないんじゃ、信じるものの選択肢もないのか。

 しかも生き残った生徒たちは、帝国に保護されているようだし。最初の攻撃が帝国機によるものだと知らなくて、解放軍――奴らの言う反乱軍の仕業だと教えられれば……帝国を信じてしまっても仕方がないのかもしれない。


 どうやって翔麻の目を覚まさせればいい?


 演説を行う帝国元帥は、その後も反乱軍の存在しない悪行を次々と語った。

 帝国の人たちはそれを信じているのだろうか……。


 最後に元帥はこう布告した。


『我々帝国は、今度こそ反乱軍の謀略を退け、この銀河に正義を正し、反乱軍を駆逐することを誓おう!』


 マイクの向こう側で一斉に雄叫びがあがる。


 これが帝国軍と解放軍の、二度目の戦争開始の合図となった。

 

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人型戦闘機・蒼銀のヴァルキリー~銀河を越えて出会った二人がひとつの戦争を終わらせるまで~ 夢・風魔 @yume-

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