第13話 伝えたかったこと
すると、不意に控えめな声が届く。すると、そこにいたのは茫然とした
「……あの、
「大丈夫だった!? お姉ちゃん!」
「……へっ?」
「……あっ、その……ごめんなさい!」
すると、さっと私の肩を掴みそう言い放つ鴇杜くん。でも、ハッと我に返ったようにさっと手を離して……いや、それはいい。全然いいんだけど……うん、ほんとドキッとした。今も
「……その、ほんとにごめんね、お姉ちゃん。僕のせいで……こんな弱くて情けない僕のせいで、お姉ちゃんがこんな……」
すると、少し俯きそう口にする鴇杜くん。……いや、なんで謝るの? 被害に遭っていたのは、他ならぬ貴方なのに……まあ、彼らしいけど。ともあれ、そんな彼に対し、私は――
「……っ!! ……お姉ちゃん」
刹那、ハッと呼吸の止まる音が。と言うのも――力なく俯く彼の身体を、卒然ぎゅっと抱きしめたから。
「……あの、お姉ちゃん……?」
そう、再びポツリと口にする鴇杜くん。その声音からも、戸惑いが大いに窺えて。……まあ、そりゃそうだよね。何の前触れもなく、急に抱きしめられたりなんてしたら。……だけど――
「……私は、貴方に救われた。だから、強くなろうと思えた。貴方が褒めてくれたこの力で、誰かを――貴方を護るために、強くなろうと心から思えた。だから、自分を責めないで。どうか……そんな悲しい
「……っ!! ……お姉ちゃん」
そう、ゆっくりと言葉を紡ぐ。……そう、これが伝えたかった。あの日、私は救われた。貴方に救われたあの日から、私は強くなろうと思えた。貴方が褒めてくれた――魅力的だと言ってくれたこの力を、ちゃんと自分自身で心から肯定できるように。この力で、誰かを……貴方を護れるよう、強くなろうと思えた。
「……ありがとう、お姉ちゃん……ほんとに、ほんとうにありがとう……」
すると、震える声でそう口にする鴇杜くん。同じく震える手で……それでも、私に応えるように、私の背中へそっと手を回しながら。そんな彼を壊さぬよう、そっと大切に抱きしめた。
「……でも、お姉ちゃん。助けてもらっておいて、こんなことを言える立場じゃないことは分かってるつもりなんだけど……それでも、こういうことはもう止めてほしいな。もちろん、お姉ちゃんを信用してないわけじゃないよ? それでも……ほら、相手が正々堂々挑んでくるとも限らないじゃない? 複数で囲んだり、不意打ちで襲ってきたり……もしそうなったら、お姉ちゃんがいくら強くても……」
「……鴇杜くん」
その後、ややあってそう口にする鴇杜くん。その声音からも、甚く心配してくれているのが伝わって。……まあ、それを言われちゃうと返せる言葉もないけれど。なので――
「……うん、分かった。でも、条件があるかな」
「……条件?」
「うん。私がこういうのを止める代わりに、鴇杜くんは今度から何かあったら……ううん、何かある前に必ず警察に通報すること。じゃないと……また出しゃばっちゃうよ? 私」
「……ふふっ、そっか。うん、分かった。お姉ちゃんがまた出しゃばっちゃうと困るから」
そう、少しおどけて言ってみせる。すると、そんな私に呼応するように少し可笑しそうに答えてくれる鴇杜くん。……うん、これなら大丈夫かな。
……ところで、ずっと聞きたいことがあったりするんだけど……でも、流石に今じゃないよね。いや、今に限らずそもそも迂闊に聞いていいことでもないんだろうけど……それでも、
「……あの、お姉ちゃん。その……全然、楽しい話じゃないんだけど……もしよかったら、お姉ちゃんに聞いてほしいことがあって……」
「…………へっ?」
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