第15話

 食事を終え、いよいよツアーも大目玉に向かう。

 「では次の場所に向かいましょう」

 研究を紹介し終え、案内人が次の目的地へと向かう。

 「次っていうとエウクレだよな?」

 パンフレットを広げながら木村が言う。

 「そうだな、…エウクレはどんな形だと思う?」

 「観測機だし、箱型の機械じゃないか?」

 そうだよなと頷き、エウクレの形を妄想する。もう少しで見れると思うとどうにも想像が膨らんだ。

 「あっ、でもAIを搭載してるらしいしさ、意外と人型だったりしてな」

 「ふっ」

 AIだから人型かもと考える木村の一意見に賛同はしかねるが、箱型以外である可能性も捨てきれないので人型で想像するとどこかおかしくて笑ってしまった。

 エウクレの位置する部屋、その部屋の前で案内人が立ち止まる。

 「この先、皆さんご存じの通りエウクレと疑似定理証明装置があります。もちろんそれ以外の物もありますが細かい部品がありますので十分気を付けてくださいね」

 扉を開けた先には多くの箱型装置が並んでいる。今はその回路を動かしていない様であった。その装置達が囲うようにした中心に淡く光を放つ観測機があった。

 「あれは…」

 阿曇が声を漏らすと同時に案内人へ声を掛ける者が。

 「そちらの方がツアーの方々かな?」

 こちらを待っていたのか、ゆっくりとこちらに近づく男性が一人。

 「ええ、そうです。所長」

 所長と呼ばれた男は見た目から四十から五十代に見える。日本人の様だ。髪は黒く、派手さは欠片もない、文字通り静けさを持ったような風貌である。

 「皆さま、よくぞお越しくださいました。所長の長門といいます」

 にこやかな笑顔で皆を出迎える。

 「ここでは観測機エウクレを用い、他の定理宇宙や公理宇宙の観測を目的に研究を行っているエリアです。あそこにある箱がエウクレです」

 所長の指さす先には先ほど目についた箱があった。どうやらあれがエウクレであるらしい。

 (やっぱあれがエウクレ)

 人型のロマンは無かったようだが箱型のメカメカしいかっこよさを持っていたのでよしとした。

 「エウクレは観測機ですが、補助要素として疑似知能を搭載しています。他にもコンピュータで行えることのほとんどは出来るようになっています。観測しかできないというわけではありません」

 皆が所長の話に耳を傾けていると木村がなにやら声を掛けてきた。

 「俺さ、あんまコンピュータとか詳しくないんだけど」

 「安心しろ、俺も詳しくないぞ。…パソコンのゲームが出来るとかじゃないか?」

 エウクレにはもちろん出来る所業だが、あまりに舐められていやしないかと黙りながら話しを聞いていたエウクレは思った。

 「所長、もうお時間では?」

 その声に右腕の腕時計をちらりと覗く。

 「おっと、もうか。すみません、もう少し話していたいのですが忙しいもので。では」

 と所長は仕事へと戻っていった。

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