第11話

 ガイドが皆に呼びかける。

 「これから超光速移動をするので今一度シートベルトの確認をお願いします」

 運転手がバスのシステムを通常から超光速へ切り替える。アクセルを踏み、車体は加速を始める。軽く踏むと、時速二万キロ、更に踏み込み一億キロ、加速は続き、光速にたどり着く。車内からは景色が見えず、空間が引き延ばされたように映る。

 「うおっ」

 バスの加速に皆が声を漏らす。

 「こんなに‥速いのか」

 加速は留まるところを知らず、光速を遥か彼方へ置き去りにする。と同時にバスは次元を超え始め、目的地の十一次元に向かって一次元上方向へ上昇する。物理的に上を向いたわけではない。

 「ただいま、次元を上昇中でございます。お気を付けください」

 ガイドの声が耳に届く。バスは加速を終え、超光速を保ちながら十一次元に着いた。

 相対性理論を考えた場合、光速を超えると過去へ行ける。このバスは今、時間を過去方向へ走っていた。

 「ただいま、研究所と同じ十一次元に到着いたしました。研究所には超光速で向かっていますのでしばらくの間、外の景色をお楽しみください」

 そんな説明を聞き、皆が車窓から外を眺める。

 そこには過去と未来、現在だけでない時間の全てが映っていた。過去の地球に未来の地球、様々な多時間点のものがそこにあった。過去方向に向かっているので、過去の景色がこちらに向かってくる。

 「過去か‥」

 阿曇はこの景色に興味はあったが驚きはなかった。それは彼が昔、車で超光速を出し過去に向かったことがあるからだ。五年前の時間点に行くために。しかし直前までは行けたが肝心の時間点には辿り着けなかった。

 「何度見ても綺麗だな」

 時間の連なりは一見ただ白く見えるが、その実、それはその時空における時間点の連なり、宇宙の景色の重なりであった。白い景色に目を凝らし、良く見れば多時間点が見える。

 「初めて見たけどさ、すげぇな」

 木村が写真を撮りながら言う。バスの中では皆が窓からの景色に目を奪われている。

 「ただいまから研究所に入るため、減速を始めますので気をつけてください」

超光速移動の可能が記述された公理宇宙より派生した定理宇宙で研究所は十一次元に佇んでいた。

 やがてバスは止まり、研究所内に阿曇は足を踏み入れた。

 研究所は阿曇の居た時間より過去方向に少し行った先、その一次元ほど上に位置していた。

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