7月4日水曜日23時45分

 真琴は時計ばかりを見ていた。

 もうすぐ、わくわくどきどき未来ラジヲが始まる。

 通知が入るとすぐにアプリを起動。軽快な音楽に、パーソナリティの2人が軽い言葉のやり取りをしているが、内容は全く頭に入ってこない。


 真琴はすぐにリクエストページを開いた。4回目のリクエストだ。要領はわかっている。あとは、無事、リクエストが通るかどうかであった。



「今日のリクエストは1通です」

「どなたから?」

「えーっと、ショートカット軍曹さんからですね」

「ショートカット軍曹さん、ありがとう」

「あ、個人情報が含まれているので。少しぼやかしますね、いや、ぼやかしまくらないといけないので、お聞きしているリスナーのみんな、わかりにくかったらごめんなさい。『大学の美男子ランキング3位の男性。明日、事故が起きないようにしてください』ですって。あれ、なんか変な文章ですね」

「なっちゃん、これって……」

「なに?」

「これって、昨日のリクエストのアンサーリクエストだよ」


 なっちゃんが笑う。


「なんですか? アンサーリクエストって」

「いやいや。昨日のリクエストで……」

「ああ。シゲさん、わくわくどきどき未来ラジヲは過去を振り返るの禁止」

「ああ。そうだった。でも、まあ、昨日のリクエストに対するリクエストだね」

「へぇ。そうなんだ」

「あれ? なっちゃん、珍しく、リクエストに興味がなさそうだね」

「だって、昨日の続きでしょ? 私は新しいもの好きなの。新しく新鮮なリクエストが好物なの」

「あのぉ……食べ物じゃあないんだから。まあ、どちらにしてもショートカット軍曹さんのリクエストには違いありません。明日、リクエストに応えますね。但し、昨日のリクエストが無効になるわけではありません」

「え? どういうこと?」

「事故は起きますよって意味です」

「意味わからない。ちょっと、興味湧いてきた。詳しく教えて」

「教えて欲しいという要望にお応えしたいところは山々ですが、もう時間がありません」

「番組を延長すればいいじゃん」

「そういうわけにはいきません。勝手に延長出来ません。大人事情もありますので」

「大人になりたくねぇな」

「あんたも十分大人だわ。では、今夜はここまで。また、明日」

「また、明日。バイバイ」


 ラジオで流れていた音楽が徐々に小さくなる。そして、ブツっという無機質な音が鳴った。


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