6月30日土曜日23時40分
夜。
真琴の携帯の通知音が鳴った。『わくわくどきどき未来ラジヲ』のアプリの通知だった。時計を見ると、11時40分をさしていた。
事前にアプリの中身はチェックした。昼に明日香が言っていたリクエストには簡単なルールがあった。
1、すべてのリクエストにお応えします。放送中にリクエストが叶う日もご案内致します。
2、おひとり様、5通までリクエストができます。
3、リクエストは可能な限り、具体的に記載をお願いします。不明瞭なリクエストの場合、ご要望通りにならない可能性があります。
4、お手元のリクエストの権利は他のリスナー様に譲渡することはできません。
5、当該サービスである『わくわくどきどき未来ラジヲプログラム』は、すべてのリクエストをご案内次第、終了となります。
大したことは記載されていなかった。真琴はアプリを起動させ、その時を待った。
ブツッという雑音が入る。その無機質の音が入ったかと思うと、軽快な音楽が流れ始めた。真琴は普段ラジオを聞かないので、スマホからそれっぽい音楽流れてきたのがどこか新鮮だった。
携帯から流れてくる音楽を聴きながら、化粧水を塗っていた。
「はぁい、今夜も始まりましたわくわくどきどき未来ラジヲ。皆さん、今日はどのようにお過ごしになられていましたか?」
「私はね。自動販売機で当たりが出ました。なので、今日の私は絶好調です」
「え? 自動販売機の当たりって出るものなの?」
「出ますよ。私、今日で3回目ですよ。もしかして、シゲさん、当たったことないの?」
「ないよ。あれは期待感だけで、当たりなんて出ないもんだと思っていたよ。なっちゃんすごいね。めっちゃ持ってる」
「シゲさんが持ってないだけでしょ。シゲさんもリクエストしたら?」
「『自動販売機で当たりがでますように』って? 嫌だよ、もったいない」
「だよね。でも、こんな些細なことから、とっても重要なリクエストまで、何でもいいので応募してくださいね」
「そうね。リスナーの皆さん。どんどんリクエストをお願いします。じゃあ、ここで本日1曲目……」
その言葉にかぶせるように、最近話題の曲のイントロが流れ始めた。
……明日香が言っていたリクエストか。
未来ラジヲのアプリ画面を見直す。
シンプルなアプリ。番組放送予定日時の案内と本日流れるミュージックのラインナップ。パーソナリティの紹介。どのページも、正直、全く興味がない。
明日香に言われた通り、リクエストページを開く。
質素なフォーマット。デザイン、手抜きしたのかなと思ってしまう。入力できるところは窓枠のように開いており、タップすれば簡単に入力ができるようになっていた。が、最初の入力できる項目でつまずいた。
「ラジヲネームか……」
ラジヲネーム欄に入力することで、そこでリスナー登録が完了するらしく、注釈にも一度確定すると変更できませんと書かれてある。
さすがに、自身の実名を入れる勇気はない。実名に関連したようなものにするか。かけ離れたものにするか。
番組はどんどん進行していく。明日香が言うには15分番組で、番組最後にリクエストコーナーがあるらしい。ってことは、もうあまり時間がない。
真琴は腕を組んで考えるが、何も思い浮かばない。部屋に置いてある姿見の鏡を見た。化粧水の後、乳液を塗り終えた真琴の顔はテカテカ。パジャマ姿であぐら。腕を組んでいる自分と目が遭った。
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