幕間

 アキが、この先に自身が世話になった長老の村があると言うので、開かれた山道を逸れ、どちらかと言うと獣道という感じの道を進む一行。アキの「結構歩くぞ」という言葉に、もうげっそりした顔のメリス。

「私行く必要ある?」

「まあまあ、話していればすぐだ。それに、君たちの故郷についても気になるしな」

「私たちの故郷?」

「メリス、さっきの罪がなんとかってのも関係あるかも分からないし、聞いておこうよ」

「そういえばそんなこと言ってたかも」

 もう忘れているメリス。こんな娘に一体何を背負わせようとするのか。苦笑いのアキ。

「そうそう、まず聞きたいことがあったんだが、十数年前、メル国で危ない薬を作った研究者がヘー国に逃げたらしいんだ。聞いたことあるかい?」

「十数年前というと、俺たち産まれてたかな、メリス?」

「産まれてたか産まれてないかくらいじゃない? 日付とか言われても私たち分からないだろうけど」

「確かに。誕生日は拾われた日のことだし」

 そうか……と腕を組むアキ。

「危ない薬ってどんなの?」

 メリスは聞く。レイヴンが反応した。

「依存性のあるやつとかじゃない?」

「ええ? それは捕えるくらいするだろうね」

「もし本当にそうだったらもっと注意の張り紙やら呼びかける集団やらが出てくるだろ。君らが知らいはずはない」

 呆れ顔のアキ。

 ところで、とメリスの方を向く。

「メリスはなぜ保護者を『先生』と呼ぶんだ?」

「なぜって……いろいろなことを教えてくれる人のことを『先生』と呼ぶんだよ、と先生に教わったからだよ。先生は親代わりかな」

「……メリスも、孤児か?」

「わからないけど、その可能性は高いね。あの国、捨て子多いし」

「なぜ? 優しい国民性だし、大切に育てそうなものを」

「だからだよ。その国民性を見越して、他国からわざわざ捨てられた子どもが多い」

「子を捨てるような人間は言語能力によるその後の扱われ方なんかは知ったこっちゃないのだろうけどね」

 レイヴンが小さく補足する。

 アキはそれを聞き、つい己の子ども時代に思いを馳せてしまった。小さく首を振ってそれを打ち消し、意識的にあの老人の顔を思い浮かべる。少し、晴れやかな気分になった。

 ……あの人は息災だろうか。

「さあ、もうすぐだ」

 アキは気を取り直して、明るい調子で言った。

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