第3話

目を覚ますと、身体中の猛烈な痛みと怠さが襲いかかり、知らない天井がうすぼんやりと見えた…

「大丈夫ですか?」

私にそう話しかけた少女は、雑に短く切った金髪を持ち、とても端正な顔立ちだったが、どこか幼いような出立ちをしていた。

さらに特徴的なのは、左目に大きな引っ掻き傷がついている事だろう、(どうしてこんな傷が…?)

「ア゙…」声を出そうと思っても、がさがさした何かが空気をゆらすだけにとどまった。

(それにしても、ここは…どこだ)

「貴女、私の家の真横に倒れていましたよ」

開かない左目を抱えながらも、心配そうな顔で私に話しかける

「この子にやられちゃいましたね…」

と、水で冷やした布を私の額にのせる

改めて状況を確認してみると、私はベッドに寝ているようだ、昨晩あの子に刺された足の腫れが全身に周り、包帯で顔まで巻かれていた。

と、例の「あの子」が「ピチュ!」と元気に金髪の少女の周りを飛ぶ。

「うふふ、くすぐったい」

驚くべき事に私をこんな状態に仕上げたドラゴンを肩にのせて朗らかに笑っていた…

「…」


またさらに気を失っていたようで、翌日になっていたようだが、視界が少し戻ってきた。

「今、薬を作っているんです、ピチューの尾毒に効くはずです」

「…あ゙…りがと…う」

「!喋れるようになったんですね!良かった…」

ほっとしたような顔をする少女はすり鉢に薬草を入れながら真っ白な本を開いている。

「そ…れ」

「?どうしたんですか?えっと…」

「レイ…ジ」

「!レイジさん!私はトルと言います。何かありましたか?」

「その…本、あの夜…開いた時も真っ白だった…」

「ああ、この本!ー何も書かれていない訳ではないのですよ」

「これは、この国の王女様が作ってくれた文字が書かれているんです。」

にこっと笑いながら私の重たい手を取り、本の1ページをなぞらせる

(ザラザラしている…)

「どうして、こんなに、ざらついてるんだ…」

「ああ!それはですね…」

するとその時、陽光の差す窓から、あの夜私を締め上げた白銀の蛇竜が口を挟んでくる。

「それは目が見えないヤツらのための文字さ」

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