第3話 舞台の上で
誰しも、新しい力を手に入れたのなら、試したくなるものだ。
そんな要望に応える施設がこの学園内にはあった。
さあ、舞台に上がろう。オレの力を見せつけるんだ。
そんな意気込みで先に舞台に上がった連中がその外に
はじき出されて悔しそうな顔を並べているのを観る。
「くそう!なんでだ!俺は強いはずなのに!!」
「ちくしょー!あんなの反則だ!」
「たったひと振りしか受けてないのに、負けるなんて……!」
おうおう、敗北者たちの弁解は達者だな。
舞台の上に立つ少女の7連勝が今まさに力を手に入れたばかりの
連中の心をバキバキに折り砕いていた。
かわいそうに……
さて、次はオレの番かな?
8人目の資格として暫定チャンピオンに挑む。
いいじゃないか。それでこそオレのストーリーが映えるというものだ。
「よろしく!オレはアキだ。君のことは何と呼べばいい?」
「あら、殊勝じゃない。名乗るなんて。覚えてほしいのかしら?
だったらワタシに一太刀でも浴びせてからにしなさい!」
そういって彼女は構えた。
緑色の刀身に黄色と黒の紋様がある。
大剣だ。明らかに武器である。
―――あれは、大当たりだな。
そう確信した。
「いざ!戦わば!」
「かかってきなさい!」
アキはまっすぐに突進して左下から突き上げるように刀を振るった。
その速度に彼女は驚いて、しかし冷静に受けて立った。
大剣が翻る。
こちらの攻撃に対して返す刀で袈裟懸けに切ろうと振られた。
が、しかし当たらない。
アキは小さなバックステップで器用に大剣をよけた。
再びの攻撃はアキの突きだった。
まっすぐに差し出される剣戟はいかにも避けずらいものだろう。
しかし、彼女もそれを理解していた。
軽く払うだけで、突きの軌道が横なぎにされて突進の進路ごと
変えられてしまう。
しまった。刀の剣士は大剣の少女に対して背中を向けてしまう事となった。
すぐさま前方前回りで彼女との距離をとった。
―――打ち返してこない?
彼女は余裕の笑みを浮かべて立っていたのだった。
「あなた、やるわね!今までの連中は一振りでも耐えられなかったのに!」
「ちょっと趣味で剣術を学んでいてね。初日から役に立ってよかったよ」
三度向かい合う、正面に構え治す。
「小細工はなしだ。真正面から切り崩す!」
「やってみなさい!耐えて見せるわ!」
アキは突進からのまっすぐ上から下に撃ち落とす剣戟を選んだ。
唐竹割だ。
彼女は……防御の姿勢。一撃を剣の防御で耐えてからはじき返して
こちらの姿勢が不安定になったところに打ち込む算段だろう。
そうはいくものか。
冷静にそして激烈に。力を込める。
―――この一撃で終わりだ!
彼女の防御姿勢にまっすぐに上から落とされる斬撃は果たしてどうなるか。
パリン!
歪な音が鳴り響いた。
「ワタシの名前は、ピースカイザー・スミノよ。これからよろしくねアキ」
彼女は顔を真っ青にしながらそれでも正面に向かって倒れた。
アキの勝利だ。
「あーあー。こんな目立っちゃったら有名人になっちまうな!」
アキは楽天家だった。
彼女を打倒したという事実が彼にどんな災難を振りかけることになるのか。
まだ誰も知らない。
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