第2話 入学式
「諸君!栄えある我がダマスカス学園にようこそ!名誉ある道を選びたまえよ」
大仰だな。
そうアキは感じた。
たかだか高校の入学式で何をそんなに居丈高に振る舞う必要があろうか。
これだから自分が貴族だとか言う自覚のある連中は困る。
他人にもそれを強要するのだから始末に負えない。
「退屈だね」
そうボソッと隣の小柄な男がつぶやいた。
「この後にモールドアウトが無けりゃ帰ってしまうところだよ。」
そう、この退屈な時間を耐えるのは理由がある。
モールドアウト……そう呼ばれる儀式が入学式で行われるのだ。
全校生徒の目の前で1年生になったばかりの少年少女が
吊り下げられた環の下で誓いの言葉を述べる。
すると、魂の結晶化……と呼ばれている儀式が始まる。
それは、かつては一部の特権階級にだけ許されたものだった。
今では15才になると全国民が検査の対象になって
おぼろげな形としてのモールド、別名、鋳型が示されるのだ。
この学園に入学資格のあるものは、その検査で武器の鋳型を持つと
診断された者のみである。
儀式が始まる……
「あたし、フライパンなんだけど。これ武器かなあ?」
たぶん外れだ。
「た、盾??フリスビーみたいに投げればいいのかな?」
あれも外れ。
「チェーンだけなんだけど。これをどう扱えと?」
外ればっかりだ。不安になってきたぞう。
次!アキ!アキ・ブルグネラ!祭壇の前で誓いを述べよ!
オレは催促されるままに自身の儀式を完遂することにした。
「アキが命じる。この魂の猛りのままに!」
淡い光が天井の輪っかから降り注いで手のひらの近くで収束する。
それは、刀の形をしていた。
鍔付きの長細い形状だとは知っていたが、こんなに美しい波紋をもつ直刀を見たことがない。
―――当たりだ。
アキはぐっと喜びを噛み締めた。
これからの学園生活が楽しみだ。
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