第4話 パロディ、リスペクト、オマージュ

 かといって、何も参考にせず作品を作ることはとても難しい。


 人物、時代、文明、そのどれもが説得力のない世界を創ってしまえば物語として破綻するし、何より読者が混乱しかねない。


 しかし落ち着いて考えてほしい。


 本格ファンタジーと言えど、参考にしていい世界はある。


 そう、「現代もの」である。


 時代背景が現代であれば時代考証は特に必要なく、また破綻はほぼない。


 ――おいおい現代ものでファンタジーとかおかしいだろうが。


 と思われる人もいるかもしれない。

 それこそナンセンスである。

 ファンタジーの垣根に、「時代」というものは存在しない。それは読者や作者、創作に触れたことのあるすべての人が勘違いしている「固定概念」である。


 なにもファンタジーは「中世ヨーロッパ風」でなければならない等という決まりはないのだ。


 時代が現代であっても、過去であっても、もちろん未来であってもいいのだ。

 なんなら実在した人物を出してもいいし、よくある歴史上の史実を捻じ曲げてもいい。

 ただし、使うならば必要なのが「説得力」だ。


 この説得力を軽視する人が、なんとも多い。


 歴史上の事実であったり、他人の設定を流用することを広い意味で「パロディ」と呼ぶことがある。創作界隈では二流がすることであり、本格ファンタジーからは大きく外れることになる。


 しかしこの過去の史実をうまくシナリオに練り込み、新たな導線として読者を引き込むことに成功したならば、それはパロディからリスペクトへと変わる。

 それは元ネタを吸収し、新たな設定へと昇華した証でもある。


 そこでもう一歩踏み出してみよう。


 明らかに過去にあった人物や他作品の設定に近いものを感じるが、その居住まいや風格が完全に別物である作品は、はたしてパロディか、リスペクト作品か。


 そこまで作り込んで、初めて「オマージュ」と呼ばれるものになるのではないだろうか。

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