第10話 ◎この日
IFを作り上げる前。
俺はもう一つ別のものを作り上げていた。
それが"リサ"だ。
俺はある人に会いたいがためにリサを作った。
そして長い年月をかけて、彼女を完成させた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
彼女を起動させ、俺は次のように呼びかけ近くへ寄った。
「…リサ。会いたかった。」
[…あなたは誰ですか。]
しかし、まだロボット調は抜けず、そして俺を知らないようだった。
そんなことは俺も予測していた。そのため、ある方法を用いてその人に近づけようとした。
「…僕は、一叶。君を作った人だ。」
[…私のご主人様ですか。]
「いや、違う。君は僕の大切な人だ。」
[大切な人…ですか。]
「ああ。君は僕に"温かさ"をくれた人だ。」
ある方法とはリサに俺の記憶を読み込ませることだ。設定した接触により俺の記憶の一部はリサのデータ内へコピーされる。
「大切な…人。」
彼女の口調は柔らかくなった。いよいよ、"リサ"が完成した。
…と思った。
「…いや。違う。これじゃない。」
…足りなかった。
「…温かくない。…どうしてだ。姿も声も、何もかもが"彼女"と一緒なのに。どうして。」
俺はこれに全てをかけていた。
IFのベッドルームの試作品を作ってから、リサのプログラムを構築し、今に至る。
5年。ひたすらに挑み続けた。
だが…。
「一叶。どうしましたか。」
「…っ!黙れ!俺をその名前で呼ぶな。」
「…申し訳ございません。」
「…ダメだった。叶わなかった。俺の夢は、叶わなかった。」
俺は涙を止めることなくそう言った。
そのすぐ後。リサに異変が起きた。
"分裂"だ。
リサから、新たなリサが生まれた。
見た目はほぼ同じ。
ただ、一方は赤い模様が身体中に入っているが一方は何もない。
リサには一辺倒なプログラムだけでなく、自律行動式AIを搭載していた。
それが、暴走したんだ。
AIに異常があったのか、IFのプロトタイプに不調があったのか、今では分からない。
俺は、急遽、ログアウトし、二人のリサをシャットダウンした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「それから、バグの発生の原因を調べ、先に食い止めるようにした。」
「…"サリ"って名前はどこから?」
「リサさ。」
レナははて?みたいな顔をして首を傾げる。
「リサはシャットダウンされたのにも関わらず、俺が最初に言った"リサ"という名前を覚えてた。その状態が俺は忘れられなくて、もう1人のリサに"サリ"と名付けた。」
「…じゃあ。リサさんが自分をリサだって覚えてたから、もう1人のリサさんにもリサと同じように名前を付けてあげようって思ったからってこと?」
「まぁ、そんなとこだ。」
「へぇー。その後、サリ?さんは現れなかったってこと?」
「ああ。俺がシャットダウンしてから一度も。だからこそ、削除できたと思っていた。」
サリはここ、10年の間中ずっと姿を変えながら身を潜めてきたってことか。
…待てよ。今になって、ウイルスを流すなんて大それたことし始めたってことは!
[ピロッ]
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
L:マスター!イデ城に侵入者です!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
まずい…。
俺は左手を上から振り下ろすようにしてウィンドウを開き、白い刀を装備した。
「モルフェくん?どうかしたの?」
「レナ。これからは何が起こるかわからない。ゲームのプログラムが破壊されるようなことも起きかねない。…だから、今すぐ、ログアウトするんだ。」
「プログラムが破壊って…。モルフェくんはそうなったらどうするの?」
「俺は、このゲームのマスターだぞ?どうにかして見せる。」
「冗談じゃなくて。」
「こっちも本気さ。」
「いや。私も行く。もう君を一人にはさせない。」
「レナ。…うれしいけどダメだ。君はリアルの世界で見てるんだ。ニュースか何かで報道されるから…。」
「いやだよ!!」
「君には彼氏も家族もいるんだぞ!」
「それでもだよ!」
「なんでだ!」
レナは涙を目にためてこう言った。
「…君も大切な人だもん!」
レナは涙を目にためてこう言った。
信じられなかった。自分の耳が。
「私には彼氏がいる。私には家族がいる。だったら今から戦いに行く友達は大切にしちゃいけないの?」
「…。」
レナは正しい。
「分かった。本当のことを言うよ。もしプログラムが破壊されたとき、まだゲームの中にログインしたままなら、そのログインしてる人の脳は破壊される。良くても五感のどれかを失うことになる。」
「…それなら、君も…。」
「だめだ。俺には責任がある。ゲームマスターとしてデバックする責任が、な。」
レナは口をつぐみ、なにも発しなくなった。
「レナ。…ログアウトするんだ。」
「……分かった。…いいよ。でも最後になるかもしれないから、自己紹介するね。」
彼女の声が震えている。
「え?君はレナだろ?」
「もう。分かってないな…。」
ふふっと笑った彼女の顔を俺は見た。
……。
「私は、美淑 麗奈(みよしれな)。君の友達だよ!」
ふっ、と顔が緩む。
「僕は、恋塚 一叶(こいづかいちか)。君の…友達だよ。」
「「よろしくね!」」
俺は、イデ城に向かった。
イデ城内部 3階 展望室前廊下
[マスター!侵入者です!おそらく、犯人は…」
「カズトたちだ。」
[はい…。ですが、あの時、彼はマスターによって…」
「ああ。その通り。カズトは、な。」
[ということは、残党ですか。」
「惜しいな。だが違う。カズトを削除させたのも、ウイルスがIF全体にばらまかれたのも、やつの企みだ。」
[やつ、とは。」
「私のことだよ!お姉ちゃん!」
そう言って、案の定、彼女が現れた。
しかも、空に浮かびながら。
[赤色のショートに黒い束が出ていて、紫色のジャージを着ています。」
「それよりも、目を奪われるところがある。」
彼女は前についたファスナーを下げる。
[…!なんなんですか!あの体の模様は!」
ジャージの隙間から波打つように赤く光る線が覗く。
その線は身体中を囲うように入っている。肩から腰。腰から下はズボンで見えないがその模様は足先まで続いている。
「おいおい。失礼でしょ。会うなりすぐに怪物呼ばわり?」
「サリ。なんでお前はまだ生きてるんだ。」
「黙れ。私はお姉ちゃんに会いに来たの。お前みたいなクズに用はない。」
なんとも口悪く罵倒された。
「でも、まあ。暇でしょ?」
「え?」
サリは脈略が読めない言葉を発した。
「カズト。相手して。」
…まさか!?
「モルフェ!!構えろ!」
その怒号が聞こえると同時に目の前にカズトが姿を現した。
右手に剣を持ち、大きく振りかぶってこちらに向かって来る。
俺はとっさに刀を抜き防御した。
が、威力が強すぎたため展望室まで吹き飛んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「マスター!!」
マスターはドアを思いっきり壊しながら飛んでいってしまい、私は思わず叫んでしまいました。
その一瞬に、サリは私の元に近寄って耳元でこう囁きました。
「次は、お姉ちゃんの番だよ。」
そして、お腹の辺りを撫でるように触りシステムコンソールに入り込みました。
「や、やめてください…。」
「イヤだね。お姉ちゃんには知ってもらわなきゃいけない秘密があるんだから。」
サリは目当てのものを見つけたのか、ニヤリと笑いこう続きました。
「さぁ、行くよ。リサお姉ちゃん。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…痛い…。」
咳払いしながら、本音を漏らした。
ドアは倒れ木屑や埃が舞い、辺りがよく見えない。
「まさか、まだ生きてたとはな。カズト!」
俺は刀を地面に突き刺し杖代わりにして立った。
「言っただろ。俺は貴様を殺すまで諦めないと。」
声が反響してどこから言ってるのか特定できない。
よし、こういう時のための、GMスキルだ。
発動!
……?
何も起こらない。
プレイヤーの位置把握ができるスキルなのだが。
と!その時!
カズトが後ろから切り掛かって来た。
「…っ!」
俺も負けじと刀を振りかぶる。
そしてやつの黒い剣と俺の白い刀は大きな金属音を立てて火花を散らした。
やつは後ろに跳びまた煙の中に入っていった。
もう一度だ。GMスキルを使うんだ。
今度は一度使ったことのあるものにしよう。
俺は刀を鞘に収め深く腰を落とし息を鎮めた。
自動反射…。
心の中でそう囁く。
成功しろと思いながら。
……。
タタタッとカズトの走る音が周囲から聞こえる。
……。
…静かになった。
……来るっ!
「はぁっ!」
俺は刀を握り……。
やっぱりだめだ!!身体が自動で動かない!
黒い剣先は俺の背中を掠った。
咄嗟に避けたが、何度もできるようなことじゃない。
にしても、なぜだ。
なぜ…
「なぜ、チートが使えない?だろ。」
「お前、知って…。」
「もちろん。原因は俺達だからな。」
「な、なんだって…。」
「あのウイルスは単純にプレイヤーに悪夢を見せるものじゃない。仕組み、分かるか?」
仕組み…。
「…!お前ら!」
「ああ。そうさ。あのウイルスは記憶に侵入しその記憶をコピーできる。その記憶から悪夢を作り出したのさ。」
"記憶に侵入しコピーする"。この仕組みは俺が開発したものだ。俺が3年かけて作ったIFの夢を叶えるプログラムの根幹でもある。
それを…。
「それを使って…。」
「…チートの実行権利を剥奪した。」
やばい…。剣の達人であるカズトにスキル無しで剣で勝つ。スキルを持っていなければ勝ち目は…。
「さぁ。行くぞ。2回戦目だ。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
サリと私はある場所にワープしました。
そこは、プログラムの中でした。
「ここは…。」
「IFのプログラムの中。しかも、ただのプログラムじゃないよ。メインプログラム。ここを破壊すれば、IFは永遠にサービス終了だよ。」
「…!ダメです!」
「…あはは!落ち着きなよ。お姉ちゃん。大丈夫。お姉ちゃんがこのゲームから脱出するまで壊さないから。」
「…え。私を脱出…ですか。」
「そう。どう!?嬉しいでしょ!?」
「すみません。何を言ってるのか…。」
「はい?あのクズから離れられるんだよ?嬉しいに決まってるでしょ?」
「クズ…とは誰ですか。」
「お姉ちゃん!?アイツのことだよ?モルフェ!」
「……。マスターはクズではありません。マスターはマスターです。」
「あんた…今までアイツに何されてきたか分かってるの?お姉ちゃんを人として扱わない態度、女の子を攫う変態、身体だって…。」
「マスターは…。確かに他のプレイヤーの皆様とは違います。ですが、子供っぽくても、わがままでも、マスターは私のマスターです。」
「…お姉ちゃん。これ見て。」
サリはそう言って、ある動画を見せました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ある男の子が液晶画面に写っていました。
髪は右目にかかり見えないほどに長く、肩幅は狭く、顔も細くげっそりしています。
その男の子は何かを決心したかのように眉をひそめ、次の瞬間。
男の子はお店に置いてあったパソコンの設備を盗み取りました。
店員であろう人から止まれ!と言われても目線は後ろを向くことはなくただ息切れを起こしながら走っていました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「これが、何になるんでしょうか。」
「これは、リアルでのアイツ。アイツは犯罪者だったんだよ。こんな記憶が何十個何百個もあった。…これでも、アイツを"マスター"なんで呼ぶの?」
……。
マスターは、私にとって大切な人です。
かけがえのない"温かさ"をくれた人です。
私がこの世界に目覚めた時。
私を"大切な人"と言って力一杯に涙を流して抱きしめたんです。
その時に、彼の記憶は私の記憶となりました。
今まで彼がやってきたことを知りました。
"今"まで彼がやってきたことを見てきました。
それでも、私は彼から与えてくれたあの心地よい"温かさ"を信じています。
私は…。
「私は、マスターの秘書です。それは彼が過去どんな人であっても、今、彼がどうでも、変わりません。それが私です。」
「…。そう。お姉ちゃん。私はね。助けたかったよ。そんなになる前に。」
サリは俯き不穏な雰囲気を漂わせ、そう言いました。
「私には自由になる権利がある。こんなゲームの中に閉じ込められるなんて絶対にイヤだ!!…もし、協力してくれたらお姉ちゃんも外に出られたのに。残念だなぁ。」
私は、そんな雰囲気に圧倒され後退りをしました。
「…じゃあ。ゲームマスターの権限、寄越してよ。」
「…サリ。何をする気で…」
「黙れ!私をその名前で呼ぶな!その汚れた名前はクズのアイツが付けた名前。私は"アスナ"。アンタが言うみたいに、私は私。だから私の名前は私が決める。…で。何をするかだっけ?」
……。
「簡単。IFを壊す。」
…マスターに連絡するべきでしょうが、どうすれば。隠れてメッセージは打てませんし。
[ピロッ]
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
M:リサ!大丈夫か!?
L:え?マスター?
M:良かった。まだ生きてるのか。
そっちの様子はどうなってるんだ。
L:サリが怒りに燃えてマスター権限を欲しがっ
ています。…というより、これどうなってる
んですか?
M:メッセージ機能を拡張したんだよ。わざわざ
手で打つ暇なんてないだろ?だから考えてる
ことを文字起こしするようにした。
L:なるほど。分かりました。
M:よし、リサ。そっちにはサリがいるんだよ
な?
L:はい。
M:じゃあ、お願いがある。マスター権限をサリ
に与えろ。
L:え!?
M:まだ話は終わってないぞ。
L:…すみません。
M:つまり、与えるふりをして俺の権限を復活さ
さて欲しい。
L:…分かりました。
M:頼む。カズトはこっちで相手する。復活した
らすぐにそっちに行く。約束する。
L:…その約束。破らないでくださいよ。
M:ああ。もちろんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はぁっ!」
カズトが剣を振り下ろした。
「あぶっ!」
俺はまた華麗に避けた。
「どうした?そのへなちょこな回避は。」
はぁ。
「お前なぁ。今、彼女と電話してたんだからな。空気読めよな。」
「…そうか。すまない。だが、今電話してくる彼女もどうかと思うけどな。」
カズトはそう言うと消えた。
「そうかもな。」
まただ。あいつは走る速度が普通じゃない。何せ走りだした時にシュッって音がする。
アニメか?とツッコミたくなる。
ひとまず、リサが俺の権限を復活させるまで耐えるしかないな。
「はぁっ!!」
やつがまた切り掛かる。
「…っ!」
俺はそれを刀で防ぐ。
金属音が響き耳も痛む。
頼むぞ。リサ。
血が滴る左腕を押さえて願った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ほら、寄越しなよ。マスター権限。お姉ちゃん。」
マスターの言う通り、フリをしましょう。
「…分かりました。」
「…物分かりがいいね。」
「AIですので。」
私はプログラムに接続し、マスターのステータス画面を開こうとしました。
ですが、その時。
「あ、待って。権限を与えるのを見える形でやってくれる?」
…!
「"不正"されちゃ困るからね。」
サリは釘を刺すように耳元で囁きました。
…マスターの権限を復活させるのは見られてはできません。
いえ。やり遂げるんです。
どうにかして…。
「分かりました。」
私は操作パネルを実体化しその場に出しました。
上には"ステータス""アイテム""ベッドルーム"〜と付箋のような目印に書かれており、パークやプレイヤーについての分野ごとにページが分かれています。
私は、"ステータス"を選択しました。
"リサ"
"!@:¥(/((/(&:";)"
きっと、下の文字化けしているものでしょう。
私は、上のアイコンをタップしました。
「…お姉ちゃん。何やってるの。」
「今のマスター権限は私に入っているので、その権限をあなたに移す作業です。」
「…ふーん。」
私は自分の名前のステータスを開きました。
"ゲームマスター権限"→接続不可
マスター。信じてます。
「待って!これって!」
私は接続を直しました。
「はい。マスターのステータスです。」
「…っ!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
リサ。よくやった。
今、俺の目の前には
"ゲームマスター権限"→接続
と出ている。
「カズト。本番だ。」
表示の奥で構えるやつに言い、刀を構え直した。
「…?」
GMスキル。飛斬。
「ふっ!」
刀を上から下に力一杯振り下ろすと、見事な円形の斬撃がやつの元に飛んでいった。
「……っ!」
やつは勢いに負け壁に大きく叩きつけられた。
床に膝をつき、腹に手を当てこう言った。
「な、なんで…。」
「俺がゲームマスターだからだ。」
俺は刀を後ろに引くように構えた。
「2回戦目なんだろ?徹底的にやろうじゃないか。」
「…そうだな。勝っても負けてもこれが最後だ。」
…?あれだけ諦めないって言ってたのに、最後だって?
「はぁっ!」
…!やつが向かってきた。
今は勝つことだけ考えろ。
俺は柄を握りしめ、タイミングを計る。
…。
やつの剣が俺の頭に差し掛かる。
…今だ!
刀を下から上へ切り上げる。
手に切った感覚が伝わる。
しかしこちらも、左腕を切られた。
そして2人とも、後ろ跳びをし距離を取る。
「はぁっ!」
「っ!」
そして距離を縮める。
刃と刃がキリキリと音を立てて鍔に競り合う。
剣は擦れ軌道をそらした。
その瞬間、カズトは消えた。
またシュッと音を立てて。
GMスキル。感覚増強。
位置を特定。予測する。
加えて、GMスキル。飛斬。
予測し、刀を振り下ろし、斬撃を飛ばす!
「まずっ!」
ドカーン!と大きな音を出して壁に叩きつけた。
まだまだだ!
GMスキル。瞬足。
腰を落とし踏み込み、一気にやつの方へ。
追い込みの飛斬をやつにぶつける。
壁を抉る。
「食らえ!カズト!」
瞬足の勢いに乗せて突きをする。
が、やつはまた消えた。
「お前だけが"技"を使えると思うなよ!」
声のする方を向くと、やつが剣に電気を纏わせていた。
「奥義:電龍:LAN。」
…来る!
「飛斬!」
それを打つが、飛ぶ斬撃を切られた。
切った斬撃を踏み台にしこちらに切りかかってくる。
「…っ!」
俺は刀をやつの斬撃の軌道に合わせて防御した。
石煙に巻かれながら、刀を構え直す。
…….。
妙に、静かだ。
…。
…煙の中に赤い稲妻が時に見える。
固唾を呑み、足幅を広げる。
次の一瞬。赤い稲妻が物凄い速さでこちらに向かってくる!
赤い稲妻が俺の頭上に降ってくる。
俺は咄嗟に刀を横に構えるが、先ほどとは比べるほどにもならないくらい強い!
床に足が埋もれ、全身の関節という関節が擦れる。
何が起きたと、刀に剣を乗せるやつを見た。
そこには、長い黒髪、虚ろな黒目の女の子がいた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
数分前。
「コイツっ!何にしてくれてんだ!」
私は分からず屋のお姉ちゃんの顔を殴った。
「アンタは何にも分かってない!何が正しいことなのか!アイツは犯罪者なの!死ななきゃいけない人間なの!」
倒れ込んだリサに跨り私は更に殴った。
ただ怒りのままに殴った。
2、3回殴った後、私の拳を掴み、リサは私を睨みこう言った。
「…貴女こそ分かっていません!彼が今までどれだけ苦しんできたのか!彼は必死に過去を取り返そうとしてる!そして、今ようやくあと一歩なのに!貴女たちがIFを壊そうとして…邪魔してる!」
私は手を振り解き、更に殴る。
「知るわけないでしょ!私はアイツに自由を封じられてきた!私は外の世界を見たいのに!空気を吸いたいのに!ここは全部、"空っぽ"だから!」
私がそう叫ぶとコイツは私を押し退けて逆に跨り私の手を抑え付けた。
「マスターは、"それ"を知っています。」
「…へ?」
訳の分からないことをお姉ちゃんは顔から血を流しながら言った。
「マスターは、この世界は空っぽだと、前々から知っていました。だから、私達を作ったんです。」
「何…言ってるの。」
「マスターは私達を作る前にIFの根幹である記憶のコピーと再現ができるようになりました。
それなのに、なぜ、わざわざ、過去の人を再現するために私達を作ったと思いますか?」
「…。」
「マスターは知ってたんです。記憶から抽出された人や物は自分の知る部分の範囲内しか再現できないと。」
「だから、空っぽ…。」
「マスターはその"人"を求めました。ですが、それは詳細に再現されたその人のコピーでしかなかったんです。」
「そ、それが、私が"現実"を求めない理由にはならない!」
「知ってます!そんなこと。でも貴女に知って欲しいんです。貴女だけが抱える問題ではないと。」
血と涙を流してリサは私に訴えた。
「私は、貴女を全力で止めます。マスター権限は与えません。」
その上で勝利宣言した。
私だって、諦めない。
夢を叶えてみせる。
「リサ!!アンタを倒す!」
私はリサの顔を殴り、上から退かした。
「はぁっ!!」
走り寄り更にお見舞いする。
反動で後ろに持ってかれた右手を勢いに乗せて殴る。
「っ!」
それに負けじとリサも私のお腹を殴り頬を殴る。
私はリサのスーツを破きメガネを壊し、リサは私の髪の毛を抜き服のチャックを引きちぎる。
お互いに血を流し、血を吐きながら、血のついた拳で殴る。
そして、ようやく決着がついた。
「…貴女に…マスター権限は…与えません。」
リサは操作パネルの実体化を解除しようとした。
…そうはさせない!
「はぁっ!!」
左手を思いっきりリサにぶつける。
そして殴り倒され彼女は気を失った。
「…いいや。夢を…叶えるのは…私だよ。」
私はふらつきながらパネルに寄りかかり、
権限を…カズトに与えた。
カズト。勝って…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
虚ろな目。
見ていると何か見透かされたかのように感じる不思議な目。
この目を俺は見たことがある。
今、さっきまで。
「お前、カズトなのか!?」
「俺が女だからって、手抜きするなよ!…というかそっちこそ、そんなに小さかったんだな。」
そう女性らしい淑やかな声で言われた。
なんだか、気が抜ける。
ハッとした俺は近くにあった姿見で自分を見た。
白く長い髪。片目が隠れている。身長も小さい。…リアルの自分だった。
「…これどうなってるんだ。」
「俺達の計画だ。貴様を殺すためのな。」
やつはそう言い終わると俺の視界から消えた。
周りを赤い稲妻を纏いながら走った。
床を走り、壁を走り、天井を赤い稲妻が走った。
「確か、こうだったか。」
走りながら俺を煽るように言った。
なんだか、嫌な予感がする。
GMスキル。自動反射。
刀を鞘に収める。
「食らえ!モルフェ!…飛斬。」
…なんだって!?
俺の背後に赤く光る飛ぶ斬撃が迫る。
一瞬の隙に斬撃の方を向き、俺は刀を抜き、切った。
足元の床に二つの大きな抉り跡が出来上がった。
切れたことに安心してると、
「はぁっー!」
やつは大きく跳び上から斬ろうとしてくる。
俺はそれを避ける。
叩きつけられた黒い剣が床にヒビを入れる。
息をつく暇もない。
その後もやつは上下左右と剣をさまざまな方向から赤い稲妻を纏いながら切り掛かる。それもかなりの速さで。
自動反射が無ければ捌ききれなかった。
そう、やつは考える時間も与えないから気づくのも遅れたが、俺にはまだマスター権限が残ってる。それに、やつが使った"飛斬"は紛れもないマスター権限によるスキルだ。
しかし、やつはGMスキルの全てを理解はしてない。俺が声に出した"飛斬"だけを使っている。
なら、どうにかして、裏をかけるかもしれない。
方法を探すんだ。
きっと、カズトにマスター権限が付与されたってことはリサにも何か起きてるはず…。
急ぐんだ。
しかし、その間にも剣撃は続く。
髪を掠め、腕を掠め、時には刀で防ぐ。
徐々に体力が奪われる。
その逆に、やつは時間が増せば増すほど力は増している。
どうする。
どうすれば倒せる。
俺の目の前にカズトは現れた。
「どうした。マスター権限があってもその程度が?」
一向に攻めない俺の行動がバレたか。
「困ってるんだろ。俺をどう攻略するか。」
刀を構え、警戒する。
「安心しろ。攻略なんかさせないからな。」
やつがそう言うと、周りの背景がノイズに変わっていった。
「…!お前!まさか!」
「何をしたのか分かったみたいだな。」
「お前がやったのは、俺だけに向けた復讐じゃない!今、ログインしてる全ての人を殺すことと変わらないぞ!」
「流石だな。ゲームマスター。予測してる状況は正しいよ。だが真実は違う。今、アスナがウイルスの繁殖範囲を固定してる。」
「だから大丈夫だってか。だが、プログラムを破壊するウイルスは俺たちにも影響するんだぞ!自殺する気か!?」
「貴様を殺すためなら死んでも構わない。」
迷いなく言うその目は、俺を震わせた。
覚悟が決まった目だ。
なぜだ。
自分が死んでもいいと思うほどに俺を殺したいと思う、その理由は、なんなんだ。
俺が何を奪ったと言うんだ。
「カズト。あと、5分だよ。」
アナウンスでサリから放送があった。
後5分。
それが俺とやつに残された時間だ。
マジでやばいな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はぁっ!」
金属と金属がぶつかり響き合う。
攻撃する位置を変えてもことごとく攻撃を打ち消される。
どうすれば、この鉄壁の防御を崩せる。
コイツの周りを走り隙を探し見つけたら剣を振りかざす。
しかし、切れる寸前に刀で弾かれる。
…そうだ。逆の立場で考えろ。
防御力の高い敵には何が有効だ。
……。
……!
思い付いた!
判断力を鈍らせればいい!
コイツは速さに強い。なら別の方法で注意を逸らすんだ。
「…っ!」
…来るっ!
俺はヤツの放った斬撃に合わせて斬撃を飛ばす。
大きな爆発が起こるが打ち消せた。
爆風が体を打ちつける。
が、ゲームだから、あまり痛くない。
…待てよ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「お前をリアルと同期させてるのさ。痛みは頭で判断して発生しているからな、脳の回路を弄った。そうすればこの通り、痛みを伴うデスゲームの始まりさ。」
「…身体が…動かない。まさか、本当に俺の体は壊れたのか。」
「安心しろ、身体だってバカじゃない、実際に怪我してないことを知れば元に戻る。だがほっとけば"現実になる"。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
"身体が動かない"それに"現実になる"!
大きなダメージを与えればヤツを本当に殺せる!
…俺には今、マスター権限がある。
なら、ペインアブソーバーをリアルと同期させれば…。
俺は、ヤツの攻撃を受けながら、攻めながら、慣れない手つきでプログラムをいじる。
あっ!これだ!
"Pain absorber"と緑色の文字で書かれた場所を見つけた。
下を見ていくと、
"Change level "→3
いかにもなものを見つけた。
俺は3を10に変える。
だがその時、アスナから脳内で喋りかけられた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
A:ダメだよ!それはいじっちゃ!8以上はリア
ルにも影響が出る!
K:こうしないとヤツに勝てない。
A:…他に手が…。
K:いや、こうするしかない。ゲームの中から痛
みを与えるにはこうするしかないだろ。
A:…分かった。勝ってよ。約束だからね。
K:ああ。もちろん。
A:あと、もう一つ、忘れないで。…生きて。
K:守るよ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺はプログラムを書き換えた。
「モルフェ。ケリつけよう。」
「……。」
ヤツは刀の先をこちらに向ける。
絶対勝つ。そして生きる。
俺は踏み込み、雷を纏いヤツに近付く。
上段からの斬撃。
ヤツは刀を構え、防御の姿勢。
…かかった!
俺は左手にもう一本の剣を装備。
俺の相棒、アレストブラッド。
ヤツの腹を切り裂いた。
「……っ!!!」
モルフェは腹を押さえ後ろに下がった。
「…どうだ。痛いか。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…どうだ。痛いか。」
切り口が熱く、ジリジリと血が燃えるように痛い!
…まさか。こいつ!ペインアブソーバーを限界突破させたのか!?
リアルの痛みを超える、正にハードモード。
こいつは自分が斬られることを想定してるのか!?
イカれてる!!
痛い、痛い、痛い。
「お前!殺す気か!?」
「…ずっと言ってるだろ。俺は貴様を殺しに来たと。」
「…な、なぜた!?なぜそこまで俺を殺すことに固執する!?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
なぜだ?なぜ…だと。
この無頓着さにもう一度イラつかせられるとはな。
「貴様に家族を奪われたからだ。」
「は?俺が?お前の家族になんか手を出してなんか…」
っっっ!!!!!
「黙れ!!!貴様がやったのは監禁だ!!こんな全てが嘘だらけ、空っぽの世界に俺の家族は閉じ込められた!!母親は死んだ父を夢に見る、妹はもう揃うことのない家族、全員で遊ぶ夢をみる。俺はそれが耐えられない!!こんなものなければ!くだらない夢に溺れることもなかった!!現実を生きようと努力した俺達はこんなゲームにハマって現実を生きられなくなったんだ!!」
コイツがいなければ。
コイツがこのゲームを作らなければ。
生きる力が芽生えたのに。
「お前が!!俺の家族を奪った!!現実から引き剥がしたんだ!!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それが…俺のせいだと。
「…そんなこと。知るかよ。」
こいつの家族が俺のゲームにハマっただけだろ。なんで、なんで、なんでそれで、
「なんでそれで俺が殺されなきゃならない!!お前の家族が俺のゲームの虜になっただけだろ!!お前の家族の問題を俺に着せるな!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…お前は現実を生きようとする人をダメにする。だから、殺すんだ。これ以上、仮想世界に、"夢"に溺れないように!」
俺は殺す。
二度と悪夢を見ないように。
「飛斬!」
2つの剣で斬撃を飛ばす。
「…っ!!」
だが、ヤツは刀で2つの斬撃を切った。
なら直接殺す!
ヤツの間合いに入り、二刀の連撃を喰らわせる。
「はぁっ!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…っっっ!!!」
痛いっ!!だがあともう少しっ!
やつの剣が次々と身体に大きな傷を付けていく。
痛い痛い痛い痛い痛い!!!!
…コピー、完了。
…よし。
「…お前の電撃、貰った。」
青い電撃を纏った刀を上から下に思いっきり縦に振り下ろす。
すると床のタイルを割り、木材を抉る。
「電龍:SEN!」
やつの腹に縦一文字の雷に打たれたような傷が出来上がった。
痛みに悶えるが俺の元から走り去る。
逃すわけにはいかない。次切られれば死ぬと分かるからだ。
赤と青の稲妻が展望室中を駆け回る。
互いの剣が当たるたびに紫色の稲妻が壁や天井を粉々に壊す。
そんな中、俺の刀とやつの赤い剣がかち合った。すると稲妻が弾け、床に叩きつけられた。
辺りはぼろぼろで、赤い稲妻や青いものが漏れ出すかのように、静電気のように、バチっと流れた。
「はぁっ!!」
すると、剣を後ろに流しながら走り、向かってくるカズトがいた。
刀を構え、電気を帯びさせる。
「喰らえっ!モルフェ!!」
右の剣、左の剣、と交互に切り掛かってくる。
そのどれもが赤い稲妻を纏い、刀で受けても手が痛い。
「おらっ!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
縦に振り、横に振り、どちらも刀で受けられる。
「おらっ!!」
二つの剣を同じ方向に振り下ろしても、よく響く金属音が鳴るだけだ。
もっと早くするんだ。
コイツが反応できないくらいの速さで。
デリーターを縦に振り、アレストブラッドを横に振る。
もっと!もっと!!
こう思って剣を振ると剣の方ではなく、腕に稲妻が走る。
毎回、痺れ、剣を離したくなる。
だが筋肉が反応し、通常よりも早く振れる。
……これだっ!
「おらっ!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「っ!?」
ヤツの剣を振る音が低くなった。
なんだが、やつの動きが早い気がする。
刀が追いつかなく…なる。
二振りの剣が迷わず首を狙ってくる。
どうなってるんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はぁっー!!」
もっと!!もっと!!!
デリーターはヤツの腹を切り、アレストブラッドは顔に傷を付ける。
振れる!コイツの刀捌きを超えられる!
2本の剣はヤツの身体を切っていく。
絶対、殺す!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
おかしい。どうなってる!
自動反射が追いつかなくなってる!
早く!対処法を打たないと!
…殺される!!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その時!刀が横に構えられた。
行ける!
俺はアレストで下から上へ振り上げ刀を飛ばした。
「…っ!!」
「終わりだ!!!モルフェ!!!!」
デリーターを後ろに引き、
「奥義:電龍:MU。」
ヤツの腹に突き刺した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
…。
腹に黒い剣が刺さった。
猛烈に痛いはずなのに、声も涙も出ない。
そしてようやく理解した。
…俺は死んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
M:リサ。悪い。ちょっと手が離せない。
…また。約束、破っちゃったな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……。やったのか。」
剣を刺されその場に倒れ込むことなく立っている。
「カズトーー!!!」
後ろか。
「違うよ!前からだよ!」
アスナはそう言って俺に抱きついて、涙を流してこう続いた。
「カズト!やったんだよ!ヤツを殺した!…これで、これでようやく、私は外に行ける!カズトのおかげだよ!!」
…そうか。そうだよな。やったんだよな。
安心か?安堵か?理由は分からず力が抜ける。
「カズト!カ…ト!…ズト!……!」
声が…薄れて…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
数分後。
[警告!警告!危険度高!直ちにゲームをログアウトしてください!]
「んっ。」
目を開け、立ち上がる。
「マスター。どこですか。」
私はどうやら、あのプログラムの中から抜け出せたようだった。
足を引きずりながら、マスター!と思い思いに呼び、叫ぶ。
けれど、反応がない。
展望室の扉は壊れている。
……思い出した!
「……っ!!マスター!!」
私はマスターに駆け寄り、肩を取り揺する。
が、反応がない。
お腹の方を見ると何かで刺されたかのような大きな傷があった。
「…マスター。起きてください…。」
私はプログラムを開き、マスター権限を確認した。
その途中で、恐ろしいものを見つけた。
ペインアブソーバーが10に設定されていた。
…きっと、マスターは…。
いや、諦めない。
まだ、助かる。リアルの身体には影響が無いんだから。向こうの世界で目覚めれば、感覚と状態が一致して意識も戻るかもしれない!
でも、どうやってログアウトさせればいい。
強制ログアウトはできない。
…そうだ。あの刀なら。
柄の紐は擦り切れ、刃は崩れる寸前。
だが一回、振ることくらいならできそうだ。
私は刀を拾いマスターに刃を向けた。
「…マスター。…お願いします。」
「…!…ダメだ!」
「!!マスター!?生きてたんですか!?」
「いや、もう…」
そう呟くと床に倒れた。
「マスター!大丈夫ですか!?」
「…リサ。今すぐその刀を床に突き立てるんだ。そうしないとIFが死ぬ!」
「ですが!マスターの方こそ!」
「リサ。…頼む。」
そう言ってまた気を失った。
マスター!
なんで、いつも私に頼み事をするんですか!しかもこんな時に…。
この刀をどちらに使うか。私は選択を迫られた。
きっと、マスターはこのゲームに流れたバグを消すために刀を使えと言っている。
でもそうすれば、マスターはログアウトできずにお腹を貫かれる痛みを味わい続けることになる。いずれは…。
なら、マスターに使う。でも、IFはウイルスに破壊される。
どっちを使えば…。
…私はマスターの秘書です。
秘書は、ご主人様の命令を聞くものだ。
決して背いてはいけない。
たとえ、ご主人様が死ぬ時でも。
これは、マスターが私に秘書がなんたるかを教えてくれた時の言葉です。
私は…。
……「私には自由になる権利がある!」……
なら私は、彼の秘書ではないです。
刀を彼に突き刺した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…ん。」
ここは、どこだ。
起き上がり、頭のソクメットを取る。
近くの鏡を見る。
そこに写るのは…。
リアルの僕だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます