第13話 白ちゃんとイチャイチャ
放課後。
学園から離れた森。
私はさっそく白ちゃんを召喚してみた。
「深淵よりいでよ。絆の獣」
ドォオオオン!
轟音とともに出現する。
教会くらいに大きな白い狼。
おおお……。
出現音がすごいけど、一回目よりかはマシだね。
私の体力も減ってない。
「体は無事か? マルフィナ」
「うん。おかげさまでね」
私は白ちゃんの体を抱きしめた。
ボフ……!
「ふはぁ……モフモフゥ〜〜」
「なにをしているのだ?」
「君のモフモフを堪能してるんだよぉおお」
ふはぁ……。
ムスクに似た良い香り〜〜。
それに、
「サラサラ〜〜。どうしてこんなに綺麗なの? 白ちゃんって綺麗好き?」
「体に付着する汚れは、
「そうなんだ。お風呂好きかと思っちゃった」
「風呂とはなんだ?」
「えーー。お風呂を知らないの?」
「
「わは! じゃあ、いっぱいいっぱい教えてあげるね!」
そうだ!
「この森の向こうにね。小川が流れる野原があるのよ。そこには色んな野花が咲いていてね。今ならタンポポにハルジオンが咲いているわ。ねぇ、今から見に行こうよ!」
「うむ。では、
「よし、きた!」
私は白ちゃんの毛を引っ張りながら体の上によじ登る。
「じゃあ、白ちゃん! 出発進行ーー!」
ギュゥウウウウウウウウウウウン!!
と、空を駆ける。
再試験の時と同じだ。
思わず無様な叫び声をあげてしまった。
「ぎゃあああああああああああああああッ!」
ちょ、
「は、速すぎだってば! もっと、ゆっくりでいいよ」
「うむ」
「もう、目的地を越えてるからゆっくり戻ろう」
「人間界は距離感がわからぬ」
「ハハハ。白ちゃんってば優秀すぎるんだよ」
白ちゃんはUターンする。
今度はゆっくりと、馬車が走るように空を駆けてくれた。
「あそこ! 野原があるでしょ! あそこに行こう!」
「よし」
白ちゃんは素直だ。そして、主人思い。
優しく地面に着地してくれた。
「ほら見て! タンポポ! 白い花はハルジオンよ。アハハ!」
満開の野花たち。
とっても綺麗なお花畑。
「白ちゃん! こっちに小川があるのよ」
「うむ」
そして、そのそばにはね。
「ジャーーン! これなぁあんだ?」
私は赤い実を手に乗ってけ見せた。
「人間の食べ物はわからん」
「これは野イチゴよ。甘酸っぱくて美味しいんだから」
「ほぉ」
白ちゃんは、大きな口で野いちごの茂みごとパクリと食べてしまった。
私は「はーー」と空いた口が塞がらない。
白ちゃんは、口の中の茂みをバリバリと咀嚼して味わう。
「ふむ。わずかに甘い」
「ハハハハハ! 実だけ食べるんだよぉ」
それから、私は白ちゃんのために何十個も野いちごを採ってあげた。
彼の大きな口には、ほんの少しの量だけどね。
「うむ。甘い」
そう言って喜んでくれた。
タンポポの種を飛ばしたり、満開のハルジオンの中で駆けっこしたり。
とても、楽しい。
私は魔法鏡を取り出して、
「白ちゃん。ハイポーズ!」
カシャッ!
「なんだそれは?」
「魔法鏡。鏡像を撮って保存できる魔法の鏡よ」
と、保存した鏡像を白ちゃんに見せる。
しかし、私の横には真っ黒い何かが写っているだけだった。
「なんだ? 写っているのはマルフィナだけではないか」
「あはは! この黒いのは白ちゃんの鼻だね。白ちゃんって体が大きいから鼻の一部しか撮れないんだよ」
私は白ちゃんから距離をとって彼の全身を撮った。
そこには黄色いタンポポと真っ白いハルジオンに囲まれる白ちゃんが、ちょこんと犬のように座っている鏡像が写っていた。
「見て。これが白ちゃんよ」
「ふぅむ。便利なアイテムだな」
「今度はアップで撮ってあげるね」
私はカシャカシャと何枚も鏡像を撮影した。
白ちゃんのブルーサワイヤのような澄んだ青い瞳が、ハルジオンの白い花びらと合わさってとっても神秘的に見える。
「マル。今度はあっちから
「ほいきた!」
もう、白ちゃんったら、自分の鏡像にうっとりしちゃって。
ちょっとナルシスト入っちゃたかな? ぷぷぷ。鏡像にハマってる白ちゃんが可愛い。
私はタンポポとハルジオンの花を繋ぎ合わせて花の冠を作った。
それを白ちゃんの頭の上に乗せて、
カシャッ!
すると、白ちゃんは、
「どんな感じだ?」
と、興味津々。
「む……。冠が小さいな。もっと大きなのは作れないのか?」
「無茶言わないでよ。白ちゃんの頭のサイズに合う花冠を作っていたら日が暮れちゃうわ」
「ふむぅ……」
ちょっとムッとした白ちゃんも可愛いな。
私はケタケタと笑っていると、つられて白ちゃんも笑った。
私たちは、ひとしきり花畑を堪能してから王城に帰った。
城に帰ると、パパとママは初めて見るシロちゃんに驚いていた。
なんだか、そんな光景も誇らしげで……。幻獣使いとして最高の生活が始まっていると確信した。
* * *
翌日。
ユリアス先輩に白ちゃんを紹介しようと高等部の校舎に行った。
遠巻きに先輩を見つけて声をかけようとして思いとどまる。
私は物陰に身を隠して、先輩を見つめる。
全身から汗がドッと吹き出した。
ああ、信じられない。
夢なら覚めてほしい。
先輩は、とても美しい女子学生と腕を組んで歩いていたのだ。
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