作者さまの描かれるSF作品は、未来的な工学技術と生体科学が融合したような、独特な世界観が魅力的です。
このお作品では感情を「機能」として扱う国家に生き、身体にポートを埋め込まれるのが常識となっている世界が描かれています。
けれどその歪な設計思想が、取り返しのつかないバグを生んでいくストーリーは、国家間の欺瞞やさまざまなキャラクター達の群像劇を緻密に描き出しており、圧巻の完成度です。
そして主人公と、その義妹であるヒロインにはそれぞれ隠された秘密があるのですが、それを越えてお互いに惹かれあう、特別な感情で結ばれていきます。
それは「恋」なのか「献身」なのか「忠誠」なのか…この国家では「未登録」に分類されるであろうその感情が、二人をどんな未来に導くのか。
重厚な物語から目が離せません。読み応えのあるSF作品がお好きな方は、ぜひご一読ください。
まず、この晴久先生の作品には、どれも一貫して美しさと静かな力強さがあります。
他の作品のレビューを読んでいただければ、それがどれほど深く読者に届いているかが分かるでしょう。
どの物語も☆100を超える評価を受けており、その理由は読めばすぐに納得できます。
多くの方がその世界観や物語構成の美しさに触れている中で、私はあえてヒロイン・綾木いのりという少女の魅力に焦点を当てたいと思います。
綾木いのりは、ただ「可愛い」だけのヒロインではありません。
記憶を失い、帰る場所すら曖昧な世界で、それでも彼女はまっすぐに、
たったひとつの想い――義兄である心弦を想い続けています。
第2章のプロローグで描かれる日記の一節は、そのまま彼女の“心の奥”そのものでした。
痛いほどリアルで、素直で、どこまでも儚くて愛おしい。
痛いほどリアルで、素直で、どこまでも儚くて愛おしい。
誰よりも優しく、強く生きようとする少女。
そのすべてが、綾木いのりの魅力です。
今回は第1章までを読んでのレビューということで、☆1の気持ちを込めて書かせていただきました。
物語が進む中で、彼女がどんな祈りを手にするのか――
2章を読んだ後、もう一度レビューを書き直したいと思っています。
人間から感情が制御され、いわゆる「異能」のような機能を追加される社会。
読み始め、統制されたディストピア世界の、ひりひりするような緊迫した雰囲気に圧倒されました。
現代を生きる私から見れば、「それでいいの?」と思うところのある社会システムを、当たり前のものとして受け入れて生活している主人公たち。それでも、彼らにだって、普通の日常がありました。
――戦争が始まる前では。
そこから、緊迫は、肌が粟立つような恐怖に変わります。
苦しさや、切なさ、辛さが漂います。
けれど、目を背けたくなるのではなく、逆に、どんどん物語に惹きつけられていきます。
それは、主人公・心弦と、ヒロイン・いのりの純愛や、「普通の日常」を一緒に過ごしてきた仲間たちとの互いを思いやる遣り取りという、「人間らしさ」が際立ってくるからではないかと思います。
「人間から感情が制御された世界」であるはずなのに、不思議です。
現在、四部構成のうちの第一部が終わり、第二部が始まったところです。
第二部は、いのりが生まれた島が舞台になるようで、どんな謎が明かされていくのか、とても楽しみです。
未来社会、感情や才能すら後付けできる時代ーー恋愛すら違法とされ、人の心は制御下に置かれている。
そんな世界で、圧倒的な適応力を持つ少年、綾木心弦と義妹いのりは、心和学園で日々を送っていた。
しかし人格崩壊者や国家間戦争の影が、二人の運命を大きく揺るがし始める……。
*****
本作の見どころは、国家システムに縛られた社会構造と、抑圧された少年達の感情がぶつかり合う場面です。
兄妹の間に芽生える繊細な絆や、抑えきれない衝動は読んでいて熱くなります。
特に好きな場面は(あまり詳しくは述べませんが)砂浜のシーンや心弦くんの内なる思いをぶちまけるところです。また、アクションも目が離せません。
各話にドキドキ、ハラハラさせられる場面が設けられ、時には目頭が熱くなることも。
もう、タップする手が止まりません。
高校生の少年達が制御社会の中で成長し、人間らしさを求める姿は、ディストピアSFとしても心に残ります。
近未来の技術と感情が交錯する壮大な物語を、ぜひ体感してください!
昨日まであった平和は、突然崩壊してしまうのかもしれない。
しかも、身近な同胞から。
長く続く戦争は、どこか遠くの出来事だと思っていた。
ある日、宣戦布告のように感染エコーが増殖する。
身近な人々がウイルスに汚染され、意志を持たない敵国の生物兵器になってしまった。
感情さえ制御された社会で、感染をしていない人々は戦う術を持たない。
その社会では恋愛感情さえも後付けの機能であり、承認されるべきものではないのだ。
一人だけ規格外な主人公は、一人の少女に愛に似た感情を抱いていた。
作者の創ったサイバーパンクの世界は、感情さえもコントロールする制御社会と自然とテクノロジーが融合した隔離社会が対比されている。
美しい自然の中では人間とテクノロジーが生き、都会では感情さえ後付けの機能となる。
そして、敵国は無慈悲で苛烈な攻撃を仕掛けてくる。
戦うことを選んだ数名の学生たちに訪れる未来はどうなるのだろうか?
主人公の愛に似た感情は本物なのか?
詩的な情景描写の美しさや、主人公達の持つ感情の正体も気になります。
この若く純粋な学生たちの身近な人達を救う戦いを見届けてほしい。
シリアスな内容なのに、緊張感が緩和する楽しさもあり。
とてもお勧めです。
タイトルに込められた「未登録感情」の余白が胸を打ちます。『Echo』は、ただのSFではなく、喪失と再生を繰り返す心の記憶の物語。
特に、砂の感触と砕けた巻貝が蘇らせる“いのり”の救命、その描写の繊細さに胸が締め付けられました。研究対象として扱われながらもなお、人を想う心を失わない“心弦”のまっすぐさに、読者としても自然と寄り添ってしまいます。
いのりの「好きと言ってほしい」という手紙の一節も、乙女らしさと哀しさが滲んでいて印象的。緊迫の中にふと差し込まれる家族の優しさ、兄妹としての再生の抱擁には、涙腺が刺激されました。
静かに迫る試練の影に、次章への不安と期待が高まります。
恋愛は、違法な「麻薬」とされた。
感情も才能も、努力さえも、機能として「後から付け足せる」時代。
少年と少女が出会ったのは、情報で分類され、性能で測られる学園都市。
そこは、人間の「感情」が最も危険なウイルスとされる時代の防壁だった。
少年は少女の傷に口づけ、少女は微笑んだ。
ふたりの間に芽生えた何かは、すでに国家が禁止した感情のひとつだった。
だが、その禁忌の絆は、やがて国家の境界線を超えていく。
兄弟の嫉妬、暴走する人格、異形の感染者「エコー」、そして始まりゆく世界戦争。
彼らの「過去」が、今の戦火の引き金だったと、まだ誰も知らない。
これは、感情をチューニングできる未来における、想いと本能の物語。
幼い頃の主人公は浜辺で倒れていた少女『いのり』を助けることになった。
いのりは主人公と親交の深い家族に招き入れられることになったのだが、その家族の長男は、いのりに捻じ曲がった感情をぶつける矛先にしてしまった。
主人公といのりが遊んでいる場所にその長男が現れ……
この物語の世界観はポートをうなじに埋め込み、感情、才能、思考、人間のあらゆる要素は機能として後付けできる世界。
成長は努力ではなくチューニングで行う事ができる世界。
しかし、中には機能追加の限界を超えてバグ化してしまう人間もいるようで……
もしかして長男は……
大きな物語に発展していきそうな作品です!
是非、ご一読を!!