お寺の若い住職が、寺に起こる怪異の解決を頼みに心霊解決センターへやってきます。
本編を知らないままに読んだのですが、すぐに心霊解決センターの二人の気質を掴めるし、馴染める。
いたいけなるものへの非道を解決してくれるので、スッキリ。
本編を知らない場合、「腹痛さん」というワードだけが謎として浮くのですが、それは本編の方をを象るワードとなるので、見事に本編への導線となるという。
すぐに登場人物となじめる、本編を知らなくても短編そのものが楽しめる、というのは初見読者への目配りもあるからであり、こういう方は当然作品への目配りもきいているので、これはもう良き作家さんに違いないです。
とにかくキャラの活躍、そして味があっていいなあ、と噛みしめさせられました。
霊能力者の「腹痛さん」こと卜部と、助手の「亀」ことかなめさんのコンビが活躍する、ホラーエンタテインメントシリーズの一篇です。
とある住職から依頼を受け、霊現象の解明に向かう腹痛さん。そこでは何か「動物」関連の怪異が起こっているらしいとわかる。
腹痛さんはぶっきらぼうなので、「何か怖いものがありそう」と目を閉じていたがるかなめさんの目蓋を無理矢理こじ開けちゃったりと、ちょっとパワハラ的なこともしちゃいます。
でも、それがどうにもスキンシップ的なラブでコメな触れ合いに見えてしまうところも、またこの二人の良さですね。
そんな風にサクっと二人の掛け合いや魅力を出しつつも、真相部分での「社会派なダークさ」を提示してくれるところで「おお!」と感嘆させられます。
こういうこと、世の中では現実に起こっているかもしれない。そんなことを思わせられる感じと、腹痛さんのクールでシニカルな「お裁き」がまた胸をすくようになります。
ちょっとラブコメな楽しさアリ、切れ味の鋭い真相と解決アリと、読者をしっかりおもてなししてくれるエンターテインメントです。