第4話

第4話



「もうっ。カフライ、そんなに笑うことないじゃないのよ。私、本当にそう感じたの。三人揃って、大柄で剛勇無双。まるでここにいる手入れの行き届いた、ここにいる筋肉隆々の美しい馬たちにも似ているわ」


 私は、ライオンがこの世界にはいなく、たとえがよくなかったのかと考えた。


 慌てて言い直したが、カフライの笑いは止まらない。


「……本当に、以前と違う、流華な黒檀の瞳がしめすように、真っ白とはなあ……」


 カフライは、途切れ途切れにそう言いながら、笑い上戸なのか押し殺せていない。


「ブリアナ様」


 その時、クリシアの呼び声が響いてきた。


 私は、カフライの逞しい肩越しから、その姿を見つけた。


「クリシアだわ。私、迎えが来たので、そろそろ行きます。それじゃあ」


 私は、クリシアの姿を見て安堵し、無邪気に顔を綻ばせ、カフライの横を通り抜けようとした。


 刹那、私の細腕をカフライに捕まえられてしまい、足を止めて彼を仰ぐ。


「ブリアナ、話は終わっていない」


「私は、終わりました。離してください」


 私は、慌ててそれを手厳しく振りほどき、クリシアのもとへ駆け寄る。


「ブリアナ」


 カフライは、追いかけては来なかったが、背後から低い声音で呼び止めてくる。


 私は、カフライが王子であることを思い出して立ち止まり、くるりと振り返る。


 雅馴な物腰で、深々と一礼した。


 私は、おばあちゃんに名家の娘なのだからと、厳しく躾けられているので、それなりの礼儀作法は心得ている。


 カフライが押し黙っているので、私は安堵してドレスを捌く。


 私は、クリシアを連れ、カフライに一度も振り返ることなく、その場を去って行った。

  

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