第5話

第5話



 私は、用意されていた衣装を着せられた。


 シフォンのドレスを身につけた時、その着心地の良さに驚いている。


 通気性のいいさらりとした上質なシフォンは、肌をふわりと包み込み、うっとりとしてしまう。


 私は、用意された衣装に、パンティやブラジャーがないことに気づいて失望した。


 ドレスの下に何も穿かず、歩き回らなければいけないこと。


 私は、嘆息を吐く。


 シンプルなスリップは、身体に沿ったデザインで、長さは踝の半ばまであった。


 その上にドレスを着て、袖なしのオーバーチェニックを合わせる。


 チェニックは、ドレスよりも濃い紫色で、銀色の刺繍が施されていた。


 胸の上で、オーバーチェニックの紐が結ばれる。


 ドレスを着ると、豊満さが際立つ。


 ウェストの細さが強調され、広い襟ぐりからは、胸の谷間がたっぷりと覗いている。


 その胸の重さなど含め、自分ではない身体だと、私は再度あらためて実感していた。


 私は、クリシアに先導され、別の部屋へ向かう間、手伝いに来ていた侍女たちの姿はなくなっていた。


 案内された場所は、ルーフテラスへ出られる白いフレンチ窓が並んだ、明るいリビングのような部屋だった。


 薔薇を模した豪華なシャンデリアが吊るしてある。


 いかにもブリアナの好みの真紅を基調にした壁紙や調度品が設えてあり、独自の華やかさがある。


 クリシアに薔薇の細工が施された豪奢な寝椅子を勧められ、私は腰をおろす。


 それはまるで、クレオパトラが寝そべりそうな妙な艶っぽさがある。


 私は、居心地悪さを感じていた。


 クリシアが用意してくれた朝食には満足できたので、私はどうにか一息つくことができた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る