第4話
第4話
明かりに照らしだされたブリアナの寝室は、退廃的。
真紅のシルクのカーテンで覆われた手彫りの巨大なベッドが、中央に置かれていた。
未加工の羊毛の絨毯に、銀の黒曜石で縁取られた装飾的な大きな鏡。
すべては、鏡に映っている妖艶なブリアナそのもので、やけに挑発的。
私は、そんなことを考えていた。
自分ではない身体は、とても攻撃的な魅力を醸し出している。
背が低く、小柄。
いつも本に鼻を突っ込んでいるせいで、眉を抜いたり、髪を梳かしたりすることを忘れがちな女性とは違う。
世界中の男性が、ほぼ理想とするそのものので、金髪碧眼の完璧な美女。
今の時点、その中身は私だから、ふっくらとした朱色の唇はお互いに一緒でも、瞳の色彩の黒檀や造形は違う。
同じ金髪であっても、自分とは全然違う。
私は、あらためて感じている。
自分と比べてしまい、何だか憂鬱な気分を抱えながら、クリシアと名乗った侍女のお仕着せを着た美女とともに、彼女は室から出た。
外には、何人もの同じような服装の侍女が待っていた。
私は、別の扉の奥にあった湯殿へ連れて行かれた。
すぐさま侍女たちに、身に纏っていた薄っぺらな夜着を脱がされてしまう。
「ま、待って! 私は自分でできるわ」
「ブリアナ様、駄目です。彼女たちの仕事を取らないでくださいませ。生活がかかっているのです」
クリシアは、手厳しくそう言って、私の動きを止める。
私は、抵抗しても仕方ないと悟り、自分はブリアナなのだと念じた。
されるがままになっていると、湯気が立っている豪奢で大きな浴槽に連れてゆかれた。
私は、促されるままに階段状の浴槽へ足を踏み入れ、腰までつかったところで座るように指示された。
私は、駄目もとで、自分で洗いたいと頼んでみた。
それは叶わず、侍女たちは慣れた手つきで、自分の仕事をこなしてゆく。
自分の身体ではないとはいえ、たとえ女性の手であっても、見知らぬものに触れられること。
私は、困惑を隠し切れない。
ただの花嫁候補なのに、下手な姫様扱いは嫌だと感じた。
あとでホアンに訴えようと、私は心に決めていた。
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