第4話

第4話



「……私の世界では、異空間の扉なんて、そんな話はきいたことないわ。本気で言っているの?」


 私は、架空の話からきた現実的ではない話が、とても信じられずにいた。


 これは夢の中じゃないかと、私自身疑ってはいる。


 目をぱちくりしながらホアンを見ると、彼は真剣真顔で頷く。


「本当です。確か貴女の住む地上界は、魔法は浸透していませんよね? あのエレベーターが消えていたことを含めて、今の状況をどう説明ができますか?」


「ならばここは、異世界?」


 私は、おそろおそろと肯定すると、ホアンは再度頷く。


「ええ、そうです。この星の世界の一つ。地上界もそうです。お互い隣接はしていますが、理によって規制を保つため、普段はそう簡単に異空間の扉で行き来なんて、できません」


「そう。ならばどうして私はここにいるの? あっ。ブリアナもここにいるの?」


 私は、非現実さに夢の中とは思いつつも、ブリアナの存在を思い出し、矢継ぎ早に質問した。


 今いるここが本の中の世界と、一緒なんてありえない。


 私やブリアナが、どうして関係してここへいるのか、とても謎だった。


 本の中のヒロインの名前、王子の名前も微妙に違う気がする。


 私自身、幼すぎる頃に読んだ本だから、記憶はとても曖昧すぎる。


 本は、私の家に遊びに来ていたブリアナにいつのまにか持っていかれてしまい、ずっと手元になく曖昧な記憶すぎる。


「ブリアナの浄化のために、もえは召喚されたのです」


「浄化?」


 これもまたどうゆう意味なのか理解できず、私は小首を傾げる。


「海聖界に紛れ込んだブリアナは、一命を取りとめました。やはり寿命だったのでしょう。転生のため、心身ともに浄化を受けなければいけません。」


「浄化?」


「そうです。ですが、ブリアナは邪鬼の囁きに負けて、精魂だけ彷徨っている現況なのです」


「じゃあ、ブリアナは亡くなっているってこと?」


 私は、ホアンの説明を受けて困惑しながらも、事実を確認する。


「ええ。ですが、ブリアナの浄化はまだです。そのためにブリアナの血筋の乙女を召喚したのです」


「それが私?」


「そうです。ブリアナの精魂をおびき寄せなければいけません」


「確かに私は従妹だけど、ブリアナと直系の兄弟とかのほうが確かじゃないの?」


 ホアンの話は、どうにかこうにか理解できたが、私自身疑問は残っているので問うた。


「ブリアナには姉妹がいませんので、もえになったのです」


「男兄弟ではダメなの?」


「それもありますが。もえの祖母は現時点としては所属していませんが、もともと海聖界のものなので、必然的にそうなったのかもしれません」


「え? おばあちゃんって、ここの世界の人なの?」


 またもや出て来た予想外な事実に、目をぱちくりさせる。

 

 おばあちゃんの名前がここで出てくるなんて、夢じゃなくリアリティすぎる。


「そうです。彼女の直系の血筋の予定だったんですが。何を間違えたのかブリアナになってしまいまして」


「どういう意味?」


「ブリアナではなく、最初からもえを召喚する予定だったのですよ。今回うまく魔法が作動してくれたみたいですねえ」


「は? ブリアナじゃなく私を? 一体どうゆう意味なわけ?」


 次々語られるホアンの話に、私は当惑を隠し切れずにいる。


「ええ。ブリアナは、正式にこの世界に来たわけではないのです。覚醒聖女兼花嫁選定のための浜豌豆の置物が、割れた影響かもしれません」


「浜豌豆?」


「ええ。ラシラス王国正式の浜豌豆に関わると、この国へ辿り着くことあるのです。多少香りを身に纏っていた以上、三人の王子の花嫁候補兼覚醒聖女候補となるのです」


 少し苦渋を滲ませて、ホアンは言った。


「……」


 私は、その言葉の意味を呑み込み、息を詰まらせる。


 三人の王子の花嫁候補兼覚醒聖女候補?


 心の中でそう呟いて押し黙り、私はまたもや軽い眩暈を感じていた。


 何か引っかかるものがある。


 予想外なことだけど、ずっと自分へ囁きかけるように脳裏を過ぎるものは一体?


 どうしてもはっきりとせず、私は掴めずにいた。


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