第2話

第2話



 ホアンが先に立ち案内してくれた場所は、思ったよりも派手な印象ではなかった。


 煌びやかに見える調度品は多くなく、華やかな壁紙も使ってない。


居心地の良さを優先しているような、落ち着いた応接セットが配置されていた。


 天井から浜豌豆を模したクリスタルのシャンデリアが下がり、美しく煌めいている。


 ホアンに勧められ、壁際の長椅子へ腰かけた。


 私が座ったのを確認したホアンは、向かい側にある一人掛けの椅子へ美艶な物腰で腰をおとす。


「さて、何から話しましょうか」


 黒と白を基調にした可愛らしいお仕着せの侍女が、お茶を淹れて出て行ったあと、ホアンは言う。


「……そうね。まずはブリアナのことかしら。なぜ彼女のことを知っているの? 彼女は一人なの?行方不明の私の両親もいるの?」


 私は、優美な曲線を描く純白のカップを掬い上げて一口した。


 ソーサーへ戻したあと、一呼吸して、質問を次々と切り出した。


 私の頭は、気になる頭上の浜豌豆のシャンデリアも含めて、混乱していた。


 まずは気になる最大のこと、それは不意にきいた従姉の名前だった。


 父の兄の娘で、一緒に付き添いで行った私の両親と四年ほど前に、海難事故で遺体は行方不になっている。


「ブリアナのことからですね。あなたと彼女は、従姉同志でしたよね?」


 やはり私のきき間違いではないらしく、ホアンが問いかえしてきた。


「ええ。でも彼女は、四年前に海難事故にあって、遺体は行方不明なの。船上から落ちてしまって、助けに行った両親も遺体も見つからずに、それっきりときいているけど」


 私は、顔を顰めながら痛ましげに言う。


「ブリアナは違いますが、あなたの両親の件は、私どもでは関与しておりません」


「そうですか……」


私は、多少なりに期待をしていたので落胆の声をこぼす。


「ブリアナとは仲が良かったのですか?」


「ブリアナが大和国の友人の家に、ホームスティに来たことがあるの。彼女と会ったことあるけど、私とはあまり仲良くなかったわね」


 私は、苦い想い出を想起しながら言う。


 ブリアナのことは、彼女自身好きになれない理由が多々ある。


 それが心の奥にしこりのように残っていた。



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