第3章 予想外な使命 第1話

第1話



 シフィルが出て行った両開きの扉から、私はホアンと室の外へ出た。


 私は、目をぱちくりさせ、自分に降りかかった非現実ぶりに、夢だと思った。


 その目に映る場所は、まるで城の内部のようで、見事な装飾の施された大きな円柱が立ち並び、とても豪奢なものだった。


 煌びやかなシャンデリアに磨き抜かれた大理石の床。


 白藍の壁には、金の縁が施されている。


 博物館に収蔵していいような精緻なタペストリーや、武器や鎧などが飾られていた。


 まるで城自体、美術工芸品だった。


 行方不明の両親は考古学者で、決して家に居つくことはなく、旅をしていることが多かった。


 十歳を過ぎた頃、私に義務教育をと両親を諭した祖母に預けられることになり、ごく平凡な学校生活を送っていた。


 私自身も美術館や博物館は好きで、足繁く何度も通ってはいる。


 目の前にある信じられない景観。


 私は、うっとりとしている。


 人けは少ない場所も相まって、しげしげと眺めてしまう。


 ホアンは何も言わずにいてくれた。

 

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