第4話

第4話



 私は、シフィルが出て行った両開きの扉から、ホアンと室の外へ出た。


 目をぱちくりさせ、自分に降りかかった非現実ぶりに、夢だと思った。


 私の目に映る場所は、まるで城の内部のようにみえる。


 見事な装飾の施された大きな円柱が立ち並び、とても豪奢なものだった。


 煌びやかなシャンデリアに、磨き抜かれた大理石の床。


 白藍の壁には、金の縁が施されている。


 博物館に収蔵していいような精緻なタペストリー、武器や鎧などが飾られていた。


 まるで城自体、美術工芸品だった。


 私の行方不明の両親は、考古学者で家に居つくことはなく、旅をしていることが多かった。


 十歳を過ぎた頃、義務教育をと、両親を諭した祖母に、私預けられることになった。


 私は、両親から離れて平凡な学校生活を送っていたが、同じく美術館や博物館は好きで、今でも足繁く通っている。


 目の前にある、信じられない景観。

もえは、うっとりとしている。


 人けは少ない場所も相まって、しげしげと眺めてしまう私に、ホアンは何も言わずにいてくれた。


 そんな中、私は先程から妙な偏頭痛を感じている。


 脳裏に掠めるものが、私に訴えているけど、どうしても掴めない。


 知らない場所なのに。


 映画の舞台装置以外、考えられない場所なのに。


 ここは、自分の住んでいた場所とは違うと。


 外国とはもっと違う場所?


 非現実なのに、どうしてもそんな考えが頭から離れない。


 知らない場所なのに、なぜか心は不可思議な感覚を覚えている。


 私は、それが一体何を意味するのかと、はっきりさせたいと心底願っていた。

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