第13話 終焉のドラゴンを一人で倒した元英雄



----紹介されてから話した方がいいよな?



いや、でも待って?

それじゃあ少し失礼な奴って思われるかも。

女の子に全部言わせる情けない男って、最悪の第一印象じゃない?


いや、でも、ここで僕から「はじめまして、ホダカです」とか言っても「なんだこいつ?」ってなるかもしれないし……逆に生意気って思われる可能性もあるし。


あぁもう、王道の転生モノなら、ここでステータス画面やら、選択肢が出てくるのに---


そんなことをぐるぐると考えていたら、目の前でコノハがふっと笑った。

 ……え、まさか、全部顔に出てた? 



僕の脳内が大渋滞している間に、目の前に大きな人影が現れた。僕なんかよりも大きい影に視界を奪われる。



あれ?コノハってこんなに大きかったっけ?


そんなはずはないことは僕が1番わかっているのに。僕の矮小な脳はどうしても情報の処理をしたくない様だった。



そう、本当に。

できることなら---嘘であってほしい。


だって、こんなに怖いなんて聞いてないんだから。


片目を眼帯で覆った、大柄で無骨な男。そのあまりにも精悍な面持ちは、甘ったれた現代日本人。平和ボケしたゆとりの権化を自称する僕にはあまりにハードモードで。



僕の心臓はドキドキが止まらない。


---主に悪い意味で。


例えるならファンタジーはファンタジーでも、こっちは頭ゆるふわ夢かわフェアリー系なのに対して、相手は終焉のドラゴンを一人で倒した元英雄ぐらいの違いがある。


どこにも交わる世界線がない。

---作画が、違いすぎる。



「彼はホダカ!



私の彼氏だよ!」




それは、きっと。今じゃない。

絶対に。今ではない。どう考えても。

もっと重要な情報あるだろう。


---あまりにも。

僕にとってマイナスすぎるスタートは、目の前にバッドエンドのエンドロールを幻視させるくらいには悲劇的で。



プツン---。




僕の全身が崩れ落ちる音がした。

視界はかろうじて見えているのに、思考だけは熱を失いゆっくり、ゆっくりと堕落していく。



次第に薄れゆく意識の中、ニタニタ笑う猫が何かを言っている。

きっと、ろくでもないことだろう。

最後まで聞くことなく僕の糸は切れたのだった。






「恋で堕ちるとは、安い男ね。」

「けれど、物語はまだ戸を開いたばかり。さあ--深淵はここからよ。」





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