第4話 コノハという少女



「異世界ってなに?」


ふわりと僕の思考に入り込んできた声。


---きっと目の前の彼女のものだ。

視線が合うと柔らかく笑みを浮かべる。



「--多分なんですが

あくまで僕の推測でしかないんですが…



僕は、違う世界?から来たみたいです…。」



---完全に不審者だ。

いきなり異世界から来ましたなんて奴。

僕だったら速攻で逃げるし、関わりたくない。


そんな気持ちとは裏腹に

心は唐突な孤独に押しつぶされそうになる。

不安が顔に出ていたのだろう。彼女は困った様に笑っていた。



「そっか。君は独りなんだね。」

そう言って彼女はまた、柔らかく笑う。


拒絶でも、励ましでもない。

突きつけられ現実は、今の僕にはあまりにも残酷な言葉だ。


僕と彼女の間に気まずい沈黙が流れる。

その沈黙を破ったのは、彼女だった。



「私、コノハって言うの!


--ねぇ、君の名前は?」




「…穂高。


--秋月穂高です。」



「そっか…。」と小さく呟いた彼女は、くるりと僕に背を向けた。


ああ。

きっと僕は見捨てられるんだろうな。

なんて、裏切られたみたいで図々しくも凹んでしまう。


コノハと名乗る彼女は顔だけ僕の方へ向けると、まるで悪戯っ子の様にニヤリと笑う。



「ねぇホダカ。


---私の恋人になって!」






あまりに突飛で、唐突な言葉が春の疾風の様に吹き抜ける。

それは、僕のキャパシティをとうに越えていた。




---僕は人生初めての強制終了ボタンを押した。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る