学校が舞台にしては、恐ろしすぎて悍ましすぎるホラー小説。これは鋏池さんでないと書けない領域だ。
イジメられていた綾香の家の方角で煙が上がっている。綾香はまだ登校していない。もしや!主人公の直央は焦る。
かごめかごめの歌を歌いながら、焼け爛れた姿で綾香が襲ってくる。学校に閉じ込められた16人の死闘が始まる。
ホワイトボードに書かれた16人の名前に何かヒントはあるのか!
ちぎれた足や腕、死姦する男子生徒、下半身が蛇になった女、阿修羅と化した主人公。脳を侵された者たちによって繰り広げられる狂宴。エロティシズムたっぷりだ。
そして訪れる大どんでん返し、インバースデイの意味が紐解かれる。
作者さんお得意の科学的根拠を纏わせた理による怪異の解釈が、真実味を帯びて迫ってくる。
怖さの演出にかけてはカクヨム1の鋏池ホラーを是非ご堪能ください。
とにかく、「一筋縄ではいかない」物語です。
舞台は学校。主人公たちの通う学校が、突如「霧」に覆われる。響き渡る「かごめかごめ」の唄。そして十数人が学校に囚われたまま出られなくなる。
いじめの被害者だった「綾香」がどうもこの怪現象には絡んでいる可能性がある。
そんな中で、次々と残虐な方法で命を落としていく生徒たち。
一体、何が起こっているのか?
この物語は読み進むにつれて、どんどんイメージが変遷していくのが何よりも面白いです。
冒頭からの展開に関しては、「学校自体が異界に転移する」というような雰囲気があり、PSゲームの「女神異聞録ペルソナ」や楳津かずお「漂流教室」のような方向性の作品かな、という印象を持ちました。
それだけでも十分にワクワクする感じで、読者を十二分に引きつけます。
でも、まだその段階ですら、この作品は「本気」を出しきっていない。
謎めいた歌と共に起こる怪事。そして現出する阿鼻叫喚の地獄絵図。なんというスプラッター! と読者は驚愕を新たにします。
それでも更なる奥行。「え? そう言う方向?」とサプライズが用意され、読み進めれば読み進めるほど、この物語に魅了されていくことになりました。
最初はとにかく、「いじめの加害者となった綾香が怨霊となり、この怪現象を引き起こして生徒たちに復讐していたのか」という想像が働きます。
でも、そんな単純に割り切れる話ではない。もっと緻密に練り込まれた「奥行」がどんどん見えてくることになります。
この現象の正体は? そもそも、この世界の正体は? 最終的に、彼らはどのような結末を迎えるのか。
最後の最後まで油断できない、緊迫感MAXの傑作ホラーです。
主人公の坂崎直央には妻神綾香という幼馴染みがいた。
彼女はいじめを受けていたのだけど、ある日、彼女の家がある方向から煙が出ているのを、坂崎は教室の窓から見た。
いじめを先導していた長谷川という女子が彼女の家に火をつけたんじゃないかと疑う坂崎だが、その後、学校の外が白い霧で覆われ、綾香がわらべうたを歌う声が聞こえてくるという怪現象が起きる。
そして、坂崎たちは学校に今、十六人しかいないこと、また、この学校から出られないことに気づいた。
パニックになる坂崎たちに綾香が歌を歌いながら襲いかかる……という物語です。
ジャンルはホラーですが、舞台設定にクローズドサークルもののミステリー作品っぽさがあって、推理小説が好きな人も楽しめるのではないかと思います。
頻繁に聴こえてくるかごめかごめの歌が不気味で不気味で……
よく聴くと怖いですよね、あの歌。
作者の筆力が非常に高くて、自分もその場にいるような緊迫感や恐怖を抱きました。ただ、けっこうグロいシーンがあるので、人によってはきついかもしれませんね。私は平気ですけど。
綾香はいじめていた人たちに復讐しようとしてこの惨劇を起こしているっぽいんですけど、主人公の坂崎くんは彼女をいじめた覚えがないみたいなんですよね。
でも、彼も復讐の対象になっているみたいで、それはなんでなのか、本当にいじめてないのか、などなどいろいろと気になる謎があって、早く先を読んで真相が知りたいって思ってしまいます。作者の物語の構成がうまいんでしょうね。
とってもクオリティの高い作品なので、是非読んでみてほしいです。