【リライト】青く広がる海にて(観測者エルネードさま)
【原作品タイトル】青く広がる海にて
【原作者】観測者エルネード さま
【原文直リンク】
https://kakuyomu.jp/works/16817330652935900582
【リライト者コメント】
宇宙はロマンですよね!( *¯ ꒳¯*)ドヤァ
せっかくのリライトなので、惑星や星空、海の美しさを、原作品とは違う文章で表現できていたら嬉しいです。
――――⬇以下、リライト文⬇――――
星の瞬き、海の煌めき。
さらさらと零れる砂の粒。
主要エンジンの故障により、「天のゆりかご」は航行不可能となった。修復はできない。時間もない。人々は覚悟を決め、小さな脱出ポッドに乗り込んだ。
窓の外で、ゆっくりと崩れていく「天のゆりかご」。恐ろしくも美しいその光景に、人々は息を呑む。やがてそれは、この宇宙を漂う塵となるだろう。
「きらきらしてる」と、ひとりの少女が言った。
脱出ポッドの酸素は有限だ。いつまでも彷徨ってはいられない。
人々は、期待と不安を抱えながら、最も近くに見えた砂と海の惑星を目指す。
「きれいな色をしているね」
未知の惑星を見下ろして、少女は目をきらきらと輝かせた。
この脱出ポッドに乗っている子供は、彼女――ティルメイだけだ。周りの大人たちが惑星の環境について議論する中で、ティルメイはひとり、窓の外を眺めていた。
「とうめいな海と、どこまでも続く砂浜」
この惑星には酸素があった。ひとまず呼吸ができるということに、人々は安堵し、脱出ポッドの扉を開けた。
しかし砂の大地を隅々まで調べ尽くし、やがて海の中まで覗き見て、人々は絶望した。
この惑星には文明がない。食糧となる生物も存在しない。唯一、海の底まで潜れば植物があるらしいということは分かったが、非常用の脱出ポッドには、深海の水圧に耐えうる装備はなかった。
脱出ポッドに積み込めた食糧は、たったの三日分だけだ。
人々は宇宙に向けて救難信号を送ったが、反応は何一つ返って来ない。一日、また一日と過ぎる毎に、大人たちの顔は暗く曇る。
ティルメイだけが、無邪気に砂浜を駆け回っていた。
やがて食糧が底をついた日、大人たちは決意した。
「ティルメイ、今日は海に出ましょう」
脱出ポッドには小型の船があった。それは海に不時着した時のためのものだが、大人たちはその船を海に浮かべ、ティルメイを連れて乗り込んだ。
砂浜から、残った大人たちが手を振った。ティルメイは笑顔で手を振り返す。
風を切って、青い海の上を船が進む。
果てしなく高く澄み渡る空と、光を反射してきらきらと輝く海――それだけの世界。
「気持ちいいね!」
ティルメイは、水に指先を触れさせて遊び、甲板に寝転んでは全身で太陽の光を受け止めた。その無邪気な笑顔につられてか、大人たちの顔にも微笑みが浮かぶ。
日が沈み、冷たい夜がやってきた。ティルメイの両親は、娘にあたたかい毛布と一粒の薬を渡した。
「明日も早いからね。今日はこれを飲んで、よく眠りなさい」
「はーい」
ティルメイは言われた通りに薬を飲み、毛布に潜り込んだ。
エンジンの止まった船の上で、大人たちのため息とすすり泣きだけが響いていた。やがて、一番最後まで起きていた大人も眠りにつき、舟は静寂に包まれる。
天上に瞬く無数の星たちだけが、もぞもぞと動く小さな毛布を見ていた。
太陽が水平線から顔を出し、静かに眠る船を照らした。
――みんな、起きるのおそいなあ。
きらきらと輝く海の上、エンジンの音が世界に響いた。
数年後、砂と海しかないこの惑星に、ひとつの宇宙船が着陸した。彼らは遠く、宇宙の彼方から旅をしている者たちだ。
文明も生命もない、砂の大地に降り立って、彼らは脱出ポッドの残骸を見つけた。中には、白く乾燥した骨が散らばっている。
砂浜には、小さな船が流れ着いており、そこにも同様に無数の白骨が横たわっていた。
その内の一つが、胸元に古びた本を抱いていた。どうやら日記のようだ。
彼らは日記の文字を解読し、この白骨たちが、かつてこの惑星に不時着した人々のもので、食糧が尽きたために集団自殺を図ったことを知った。
「そんなことがあったのか……」
しかし、彼らは首を傾げた。脱出ポッドに乗り込んだ唯一の子供、ティルメイという名の少女。遺された白骨はどれも大人のもので、子供の骨が見当たらない。彼女が着ていたと思われる衣服もない。
ティルメイは一体どうなったのか――日記には、確かに薬を飲んだと書いてある。
船を出ると、彼らは砂浜に小さな足跡が付いていることに気付いた。
それははるか彼方、地平線まで真っ直ぐに続いていて、きっとそれが彼女の選んだ道なのだろう。
【自主企画(参加用)】みんなでリライトしよう♬ くろこ(LR) @kuroko_LR
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