【リライト】綺羅星の子(りつか︎🌟さま)

【原作品タイトル】綺羅星の子

【原作者】りつか︎🌟 さま

【原文直リンク】

https://kakuyomu.jp/works/4852201425154875311/episodes/16818093085351364378

【リライト者コメント】

登場人物の事情や、周りの景色を想像しながら書くのは、難しかったけれど楽しい経験でした!

(バトル描写があっさりめに終わってしまったのは力不足で申し訳ないです…)



――――⬇以下、リライト文⬇――――


 ぼんやりと考えごとをしながら歩いていた俺の耳に、ガラガラという異音が聴こえてきた。顔を上げると、道の先から凄まじい勢いで迫ってくるものが見えた。

 ――何だ……?

 石を弾き飛ばすような音は徐々に激しさを増し、その何かの正体が見えてくる――荷馬車だ。俺は、はっと我に返った。

 振り向いてみれば、先程と変わらない風景だ。道の真ん中、赤い髪をした女性がこちらに背中を向けて立っている。

 ――まさか、気付いてないのか……ッ!?

「危ない!」

 俺は彼女の腕を掴んで引き寄せた。荷馬車は一瞬で俺たちの横を通り過ぎ、店先に並んでいた果物を蹴散らしながらようやく動きを止めた。

 ――今、何か……見えたか……?

 一瞬のことだったから見間違いかもしれないが、荷台から男の腕が伸びてきたような気がする。

 状況が飲み込めていないのだろう、目をぱちくりさせてこちらを見上げてくる彼女を道の脇に座らせ、俺は荷馬車へと近付いた。

 轟音を聞きつけて、一体何事かと人々が集まっている。潰れた果物と木の破片が辺りに散乱し、可哀想に、馬は目を回して横たわっていた。

 かろうじて形を留めた荷台から、ふたりの男がよろよろと立ち上がるのが見えた。片方は大したケガではなかったのか、荷台から降りると、すぐに近くの路地へと姿を消した。

 残されたもうひとりの男は頭を打ったらしい。頭を押さえ、ふらつきながら降りてきた。

「おい、大丈夫か?」

 俺は思わず手を差し出――そうとしたが、そいつは俺の顔を見た途端に拳を振り上げて襲いかかってきた。

 男の拳が頬を掠めて空を切る。さすがに本調子ではないらしく、男の動きは緩慢で、隙だらけだ。片方の腕を捻りあげてやれば、抵抗もできずに倒れ伏した。

 その時だ。


「道を開けろ!」


 濃紺色の制服を着た男たちが人混みをかき分けて現れた。見覚えのない制服だ。ウィンザールの関係者ではないな――どこの貴族の私兵だ?

 指揮官と思われる男が、俺と足元の男に気付き、近付いてくる。

「あの荷馬車に乗っていたのは……」

「こ、こいつだ! こいつが乗ってたんだ! おれじゃねぇ!」

 俺が答えるより先に、荷馬車の男が足元で騒ぎ出した。

「突然殴りかかってきやがったんだ! おれは何もしちゃいねぇ!」

 ――はぁ?! 何を言ってるんだ、こいつは?!

 俺の力が緩んだ隙に荷馬車の男は逃げ出そうとしたが、まあ無理だよな。制服の男たちに囲まれて、男は逃げ道を失い取り押さえられた。

 指揮官らしき男が、俺の方を見て口を開く。

「……さて。改めて聞くが」

「俺じゃない。その男が荷馬車に乗っていて、殴りかかってきたんだ」

「なるほど? 言い分が食い違っているな。我々にはお前も、あの男も、どちらも等しく疑わしい」

 制服の男たちの視線は、明らかに俺のことも警戒している。まずい事態になった、と俺は内心で唇を噛んだ。こんなところで立ち止まっている場合ではないんだが――どうする?

「……俺は」あまり気は進まないが――仕方がない。「ウィンザールの人間だ」

 指揮官の男は、こちらを値踏みするような視線を向けてくる。

「……疑わしいなら、人を送って確かめてもらってもいい」

 しかし、制服の男たちの警戒が緩む気配はない。

 ――時間がないっていうのに……この状況、一体どうすればいい?

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