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全てがつまらない。
狭くて窮屈で呼吸のしづらい箱庭。
少し考えれば世界は広いことが分かるのに、彼女達にはその狭い世界の箱庭が全てだった。
興味のない流行の話、全く共感できない格好いいと思う男性アイドル、何が楽しいのか分からない他校の彼氏の自慢と愚痴。
彼女はそれらに耳を傾けることなく一人で過ごしていることが多かった。
正確には彼女と同じ思考の友人と呼べる者もいることにはいる。
しかし、クラスが異なるため、直接会って会話するのは放課後になることが多かった。
ちらりとクラス内を見れば、ほとんどの同級生が化粧をし、髪を染め、価値観が合うのか擬態しているのか分からない派閥が複数出来上がっている。
そのどれにも属さない彼女はクラスでは当然浮いており、全く会話をしたこともないのにひそひそと何かを囁かれてはくすくすと笑われる日常。
班分けや体育でのチーム分けでは必ず残り、じゃんけんで決められる日常。
「くだらないな」
彼女は小さく呟くと、机に頬杖をついて窓の外を眺めた。
薄暗く今にも雨が降り出しそうな空。
彼女も視界と同じく光がない空。
色はちゃんと認識できているのに、世界全てが濁って見えている。
人に合わせ、その群れから追い出されないように必死なその姿は彼女には茶番に見えていた。
つまらない
幼少期からそうだった。
彼女の思考や好みは誰にも共感されることはなかった。
何かを言葉にすれば、両親が顔をしかめ、近所の大人は不気味なものを見るように遠巻きに何かを囁き、同い年の人達は自身が標的にされないようにする絶好の的として彼女を利用していた。
傷つかないわけではない。
何も感じないわけではない。
しかし、その感覚も目を閉じ、耳を塞げば慣れてしまうものだ。
何も感じず何もないと認識してしまえば、それは少々鬱陶しい騒音と変わりはない。
反対にその鬱憤を晴らす為に、彼女の言動には棘があり、行動には常に拒絶がへばりついていた。
冷たい刃物のような言葉を躊躇なく刺し、自身の不満を友人にぶつけるその姿は周りの興味のない人間と何か違いがあるのだろうか。
日々、抑えられない自身の感情に後悔と絶望を感じ、周りの声を聞こえないふりをする日々に彼女は疲れ果てていた。
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