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家に帰れば母親の大学紹介BGMで食事をし、そのまま勉強する時間となる。

昼間の時間が夢のようだったと彼は思った。

心の底から笑ったのはいつぶりだろうと、ペンを止めては振り返りふっと笑う。

いつもはやる気の出ない勉強も少しだけやる気になっていた。

どこを受験するのか、まだ決めていない。

母親が有名な大学をと望むが、彼自身はそれを望んでいない。

再び息苦しさが彼の喉元に押し寄せてくる。

そのとき、タイミングを見計らったようにスマートフォンがメッセージの受信を告げた。

『やあやあ!さっきぶりだね!』

テンションが高い文章の後に続くのは、次のお出かけ予定を決めようというものだった。

さすがに毎週は母親がいい顔をしないだろうと、彼は思い少し日数を空けることにした。

『君の見たいものを見よう!』

まるで目の前にいるかのように元気なメッセージが送られてくる。

「見たいものか・・・」


どうせならきらきらしたものが見たい。


黒く何もない世界ではなく、きらきらと輝き彼の心を満たしてくれるようなもの。


『じゃあ、ど定番の水の中!水族館へ行こう!!』


『ど定番の水の中ってなんですか?』


『私もわからん!』


真面目なのかふざけているのか分からないテンション高めの文章は、彼に笑顔と少しの光を与えてくれる。


日程を決め、再び勉強を始めた彼は既に次の約束の日を楽しみにしていた。

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