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ボウリング当日。
現地集合という女性の元気なメッセージにより、彼はボウリング場へと向かっていた。
母親は外出することには特に何も言わない。
彼にも友人はいるだろうし、付き合いも大切だと思っているようだった。
待ち合わせ時刻の十分前。
丁度良い時間に到着したと彼は思っていたが、ボウリング場の出入り口前で既に女性は待っていた。
動きやすさ重視の服装に何故か大きなリュックサックを背負っている。
そういえばと彼は川辺で出会った日を思い出す。
あの日も同じリュックサックを背負っていたなと妙な納得をしていると女性が彼に気づいた。
「すみません。遅くなりました」
世間一般でよく使われる挨拶をしつつ全くもってそんなことは彼は思ってはいない。
「待ち合わせ時間よりかなり早いよ。寧ろ、私が早く着き過ぎちゃってさ」
すぐ遅刻しちゃうんだよねと笑う女性。
「社会人としてはどうなんだって思うけど、仕事は遅刻しないからセーフなんだよね」
何故か誇らしげに自慢する女性を冷めた目で彼が見ていると、居たたまれなくなったのか、「さあ、レッツボウリング!!」と彼の背中を押してボウリング場へと入っていこうとした。
「押さないでくださいよ!!」
そう言いながら彼は自身の声が久しぶりに弾んでいることに気づいた。
女性のテンションにつられているのか、それとも彼自身が楽しんでいるのか。
久しぶりの感情で判断ができない彼の心情を知ってか知らずか女性は楽しげに受付を済ませていた。
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