〜第十九話〜

永太が次に目が覚めた時、そこは見知らぬ場所だった。辺りは白く、目の前に大きな神社があるだけだった。

永太はその神社に引き込まれるように入って行く。1番奥まで進むと、そこには古い像が置いてあった。不思議に思いつつこの像を見ていると、急に声が聞こえてきた。

「この声が聞こえているか?」

永太は驚くが、何故か体験したことがあるような気がした。

「聞こえているようだな」

永太は何も言っていなかったが、関係ないと言わんばかりに話を続ける。

「先に言っておくが、ここは天国や地獄、死後の世界というものではない。また、お前は一度ここに来ている」

「一度ここに来ている...?」

永太は衝撃を受けた。なぜなら、記憶のどこを探してもこのような場所はなかったからだ。

「お前は過去に一度ここへ来て、とある選択をした」

永太は言葉の意味を説明せず、淡々と説明する像?に少し苛立ったが、話を聞くことにした。

「それは、過去を捨て今を選ぶか。今を捨てて過去を選ぶか。というものだ。そして、お前は今を捨てて過去を選んだ。」

永太はこの声が何を言っているのか、よく分かっていなかった。そして、意味を説明しないことに痺れを切らし、質問することにした。

「今を捨て、過去を選ぶとは?また、あんたは一度自分がここに来たと言っていたが、俺にはその記憶がない。ちゃんと説明してくれ」

「せっかちなやつだな。しょうがない。説明してやる。まず、一度ここへ来たことがある。というのはそのままの意味だ。お前は一度、ここへ来た。記憶がないのだろうが、それは当然だ。ここはいわゆる神の領域、そんな場所に人間が来て耐えられるわけがない」

「待て、ならなぜ俺は無事なんだ?」

「それは私が近くにいるからだ。簡単に言えば加護によりお前は耐えられている。しかし、ここの記憶を持ったまま現実に戻れば、お前は廃人、もしくは死だ」

永太は少し納得がいかなかったが、話を聞くことにした。

「そして、今を捨てて過去を選ぶに関しては、お前が1番よく知っているんじゃないか?」

自分が1番よく知っているという言葉に、永太は混乱した。

「はぁ。お前、ループしていただろう。それが、今を捨てて過去を選んだ結果だ」

永太は、ループという言葉を聞き、少し冷静になる。なぜ、ループのことを知っているのか。疑問に思いながらも永太は次の言葉を待つ。

「ループの回数は3回が限界だ。なぜなら、それ以上しても意味がなくなるからだ。3回ループをして、失敗。もしくは成功した場合、お前の存在はなくなる。しかし、3回目のループでは、運命がかなり弱まる。お前も見覚えがあるんじゃないか?」

その言葉を聞き、永太は今までのループを振り返る。確かに、ループごとに多少言葉が違っていた。勘違いかとも思っていたが、それは運命が弱まっている証拠だったのだ。

運命が弱まるって何だ??

「待て、そもそも運命とは何の話だ?」

「簡単な話だ。お前の話で例えると、運命とは本田彼方が死ぬこと。お前は運命に逆らって本田彼方を助けようとした。運命が弱まる3回目は格段に助けやすくなる。それだけだ」

少し説明不足な気がしたが、大体の話は分かったので気にしないことにした。

「そして、このループを発動する条件は、助ける対象が死者であること。同じ時代を生きていた者。そして、運命を変えてでもその者を助けるという強い意志があること。これらを達成した時初めてループをすることができる。お前は彼方を助けることに成功した。だがお前の存在はなくなったわけだ」

その言葉を聞き、永太は安心した。彼方は生きている。それを聞けただけでも嬉しかった。

「お前はこれから、再び選択をすることとなる。

一つ目は、現実世界に残り続けることだ。しかし、お前の存在は既になくなっているので、物事に関与することはできない。

二つ目はあの世に行くことだ。しかし、天国か地獄に行くかはお前次第だ」

永太は腕を組む。しかし、すぐに腕を解き答える。

「現実世界に残り続ける。それが俺の答えです」

「そうか、ではお前を現実世界に送る。後悔はするなよ」

そういい、白い光が永太を包んだ。

次の瞬間には、彼方の家にいた。リビングに降りると彼方が居たので話しかけたが、反応は無かった。

「本当に消えてしまったんだな...」

そう呟いたが、その声も彼方には届かない。しかし、不思議と悲しくはなかった。なぜなら、彼方が助かったからだ。自分のことがどうでもいいわけではないが、彼方を助けられた喜びの方が、永太にとっては嬉しかった。

これからは、健太、優斗、彼方のことを見守りながら過ごそう。そう考え、彼方が見ているテレビを一緒に見ることにした。


終わり

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永遠の日常に終わりを すずめ @Karasudare

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