〜第十八話〜

「いや〜久しぶりに来たな」

彼方が脳天気に声をあげる。永太の心配など気にせず、彼方はゆっくりと山の中へ入って行く。途中は何事もなく奥の広場まで来た。

「よくここで遊んでたよな。懐かしいなぁ」

感傷に浸るように彼方は言った。

「確かに懐かしいな」

平静を装いながらも、永太の頭の中では焦りと不安が襲ってきていた。大丈夫だ。心配ない。永太は自分に言い聞かせるようにそう思う。

「よし!後で健太と優斗も連れてこようぜ!」

「そ、そうだな。みんな嬉しいだろうな」

いつ、何が来るか分からないので、永太は彼方との会話にあまり集中出来ていなかった。

その時、広場の入り口から気配がした気がした。しかし、永太がそこを見ても何も居なかった。永太の不安が増幅する。

「そろそろ帰るか。健太と優斗も呼びたいしな」

「え?」

「? どうした?」

「い、いやなんでもない。早く帰ろうぜ!」

永太は、彼方に帰ると言われ、少し戸惑っていた。これで終わりなのか?考えるも答えは見つからないので、帰ることにした。

「ただいま〜」

彼方がそう言うと、彼方の両親からおかえりと帰ってくる。

上の階へと上がると、健太と優斗は既に起きていた。

「よう、お前らどこ行ってたんだ?」

「ランニングに行ってたんだよ」

「ランニング!?俺も行きたかったなぁー」

「だったらもっと早く起きることだな」

そんな他愛のない会話を聞きながら、永太は考えていた。これで本当に終わりなのだろうか?まだ、今日を終えてみないと分からない。そう考え、今日も彼方の家にいることにした。


数時間後

彼方はまだ生きている。しかし、時々気配を感じる気がするのだ。気配を感じる方を見ても誰もいない。これがかなり永太にとって不安だった。もしかして、この気配の正体が彼方を殺しているのではないか。そのような気がしてならなかったのだ。

永太は最大限注意して、0時まで起きようと考えていた。しかし、それは叶わなかった。なぜなら、0時になりかける時永太にかなりの眠気が襲ってきたからだ。それに耐えようとしたが、抵抗虚しく永太は寝てしまった。

そうして永太が眠ると、学校、駄菓子屋、山などの今までの記憶が走馬灯のように流れ込んできた。

そして、永太は自然とそれを受け入れていた。

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