〜第十三話〜

「は?」

スマホに表示された7月5日という数字を見て、永太は唖然としていた。

どういうことだ?なんでループしていない?これで終わり?おかしい。

様々な考えが頭の中を回る。そして、理解する。

ー彼方はもう助けられないー

それを理解した瞬間、焦り、不安、絶望。そのような感情が永太の頭の中に一気に押し流され、永太を襲う。

「うわああああああああああああああ」

永太は周りのことなど一切気にせず、大声で叫んだ。

その声に反応したのか、階段を上がってくる音が聞こえる。ドアが開くと同時に声がする。

「あんた!あんまり大きな声出さないでって...どうしたの?」

永太はいつの間にか涙を流していた。それに気が付いた母親が永太を心配する。

永太は、母親を見て少しだけ正気を取り戻す。

「ごめん、1人に、させてくれないかな...」

絞り出すような声で永太は言う。母親は何か言おうとしていたが、何も言わず部屋を出た。

永太は何も考えずベッドに寝転がる。しかし、眠気もなく寝る気分でもない。ただただ、ボーッと寝転んでいた。

ベッドで寝転がっていたが、お腹が空いてきてしまったので、仕方なくリビングに降りることにした。

リビングに掛けてある時計を見ると、学校に行く時間は過ぎていた。それどころか、既に昼頃を指していた。リビングを見渡しても誰も居なかったので、おそらく母親は買い物にでも行ったのだろうと永太は考えた。適当なお菓子の袋を開け、テレビを見る。しかし、テレビの内容は一向に頭に入ってこず、お菓子の味はよく分からなかった。

数分後、完全にお腹を満たしてはいないが、お菓子の袋を食べ切った永太は、テレビを切り部屋に戻ることにした。そして、さっきと同じように寝転がるが、小腹を満たしたせいか頭に考えが巡る。そのせいで、時間がかなり長いように感じてしまった。


夜になり、またお腹が減ってきた頃、母親が部屋に来て晩御飯を食べるか聞いてきた。永太はどうしようか迷ったが、お腹も空いていたので食べることにした。

晩御飯を食べている時、母親に話しかけられた。

「良かった。晩御飯食べれるぐらい元気になったんだね。朝見た時、本当に無気力で今すぐ消えちゃうのかと思ったよ」

母親がそんなことを言うと、朝の永太を見ていない父親が言う。

「はっはっは!母さん大袈裟だよ。一昨日はかなり元気だったじゃないか!1日2日でそんなんになるもんか」

父親がそう笑い飛ばす。

「そうね、少し心配しすぎだったのかも」

永太は、そんな話を全く聞いていなかった。聞く気がなかった。ご飯を食べ終え、部屋へ戻る。

部屋に戻った永太は、憂鬱になりそうだった。食欲のため、という理由で晩御飯を食べたが、なんだか母親と父親の声を聞いてムカついてしまった。彼方が死んだ。なのに誰も気付かない。それどころかもう助けることもできない。そのようなことを考え、涙がまた溢れてくる。

「ああ、もう終わりだと分かっているけれど、もう一度チャンスがあるなら。もし次があるのなら、次は絶対に後悔しない選択をする」

まるで宣誓のようなことを永太は言った。自分でもなぜ言ったのか全く分からなかったが、無性に言いたくなった。そして、永太に眠気が襲ってくる。

永太はその眠気に抵抗せず、流れるように眠った。


いつの間にか朝を迎えていたが、何もやる気が起きない。時間だけ確認しようとスマホを取る。そこに表示された月日は6月4日。また、1ヶ月前に戻っていた。

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