〜第十一話〜
時間が5時50分程となった時、男3の両親が起きてきた。
「あら、永太くん起きるのが早いわね。何かあった?」
「いえ、特に何もないです。たまたま早く起きちゃっただけなので」
「少し経ったら彼方もリビングに来るだろう。お茶でも淹れようか?」
「ありがとうございます」
永太はコーヒーを飲んでいたので喉の渇きはなかったが、なんだか無性に欲しくなった。おそらく、安心感が欲しかったのだろう。
お茶を飲みながら待っていると、6時となり彼方がリビングに降りてきた。
「おはよう」
彼方がそう言うと、各々返事をする。
「永太、俺日課のランニングに行ってくるわ。俺の両親がいるからって遠慮せずに部屋に戻ったらいいんだぜ?」
「おいおい、俺達がいると気まずいみたいに言うなよ」
他愛のない会話をしながら、彼方は着替えがある部屋へと行こうとする。
「あ、ちょっと待ってくれ。俺もそのランニングに付いて行っていいか?」
「ん?あーまあいいけど、お前俺について来られるのか?」
「あんまり舐めんなよ。そこまで体は衰えてねぇよ」
「まあそれならいいが...」
少し不安そうな彼方を置いて、永太は着替えがある部屋へと行く。
少し経った後、永太は彼方と家を出ていた。
「よし、行くか」
彼方がそう言い、走り始める。それに、永太が付いていく。
「お前、ペース早くないか?」
まだ、1分程しか経っていなかったが、永太は少し息が荒くなっていた。
「だから言ったじゃねぇかよ。俺について来られるのかって」
「いやいや、こんな早いと思わなかったんだよ」
そんなことを話しながらも、動かす足は止まらない。
数分後、永太は完全に疲れていた。
「おいおい、完全にバテてるじゃないか」
「はぁ、はぁ。ちょっと休憩しないか?」
息切れしている状態で永太は言う。近くにあったベンチに座り、休憩をする。
「そういや彼方はここら辺によく来るのか?」
「ああ。ランニングを始めてからは毎日来てるよ。あ、それで思い出したけど、確かあそこを曲がったところに自販機があったはずだ。何か欲しいものあるか?」
「うーん、そうだな。じゃあ午後の紅茶をくれ」
「まさか午前中に飲むつもりか?悪いやつだな。それじゃ、すぐ戻ってくるよ」
彼方が冗談を言いながら、奥側へと駆けて行った。その間、永太は彼方の死を少しの間忘れてしまっていた。
少し時間が経ち疲れが取れてきた頃、彼方が中々帰ってこないことに気が付いた。
「何かあったのか?」
そう呟き、永太は気付いた。完全に安心し切っていたのだ。
永太は彼方がいた方向へとすぐに走っていく。1分ほど走った所に自販機があったが、彼方はそこにいなかった。
その時、永太は最悪の未来が思い浮かび、疲れなど気にせず全力で山の方向へと向かった。
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